神狐の巫女姫☆妖奇譚 ~封印された妖を逃がした陰陽の巫女姫、追いかけた隣大陸で仮面王子に恋しました~

綾雅(りょうが)電子書籍発売中!

第一章

第1話 封印を踏んじゃったかも!

*************************

しんこのみこひめ、あやかしきたん と読みます。

陰陽術を駆使して戦うお姫様と、ドラゴンの魔力を使い立ち向かう王子様。

和洋折衷のお話です(*´艸`*)


作者名は小説担当「綾雅(りょうが)」ですが、原作協力&イラスト「蒼巳生姜」様との合作としてお楽しみください。

*************************


https://26457.mitemin.net/i560859/


 絢爛豪華な調度品が飾られた平屋造りのお屋敷、廊下をアイリーンは駆け抜けた。心臓がどきどきしている。見つかったら叱られちゃう。背中で揺れる紺色の髪は、毛先に向かうほど柔らかく薄い色へ変化した。髪と揃いの青紫の瞳が、せわしなく逃げ場を求める。


「姫様! どちらですか!!」


 彼女を探す侍女長の声が廊下に響いた。


 悪戯のバレたアイリーンは、兄シンの部屋にするりと逃げ込む。くすくすと笑って手招きする兄に従い、ツインテールの少女は足元に潜った。頭を入れてすっぽりお尻まで隠れたところで、扉をノックする音が響いた。兄が声を掛けると扉が開き、侍女長キエが顔を覗かせる。


「お勉強中失礼いたします。こちらにアイリーン姫がお見えではありませんか?」


「いや、気づかなかったね」


「そうですか……」


何をやらかしたの」


「帝様の大切な壺に、蛇を入れましたの……驚いた侍女が落としてしまい」


「割れちゃった?」


「いえ、用意周到にも式紙しきがみが用意されていましたわ」


「あの子らしい」


 苦笑いした兄が「見かけたら教えるよ」とキエに返す。それを合図に扉が閉まった。隠れていた机の下から転がり出たアイリーンは、ほっと安堵の息をつく。それから助けてくれた兄を見上げた。


「ありがとう、シン兄様」


「悪戯はほどほどに。それと式紙を悪戯に使うのはよくないよ。後でちゃんと謝っておいでね」


 言い聞かせる兄シンは艶のある黒髪をしている。紺色に近い深い色の瞳を柔らかく細めて、可愛い末の妹を撫でた。まるで猫のように甘えるアイリーンは、こてりと首を傾げてから笑う。


「ええ、シシィに謝るわ」


 どうやら今回蛇を引き当てた侍女は、シシィという名らしい。壺磨きを任せられるのだから中堅の侍女だろうが、気の毒なことだ。同情するものの、可愛がる末妹を強く叱ることはしなかった。


 皇位継承権は高くないが、末のアイリーンは皆から愛される子だ。悪戯好きな面も、やんちゃな子猫のようと表現される。本当に悪いことはしないので、周囲も呆れながら許してきた。誰からも愛される自慢の妹は、兄にひらひらと手を振る。


「また後でね、シン兄様」


「気をつけるんだよ、リン」


 アイリーン姫を愛称で呼び、シンは彼女を庭へ逃した。姫君らしい長い裾の衣装なのに、アイリーンは裾を摘んで膝も露わに駆けていく。お転婆で有名なアイリーンだが、もうすぐ16歳になる。そろそろ夫を選ぶ時期だった。


 落ち着いてくれたらいいのだけれど。そう思う反面、まだこのままでいて欲しいと願う。民からの人気も高い末姫は、あの天真爛漫な自由な振る舞いが好ましいのだから。もう少し、好きにさせてあげよう。皇太子シンはそんなことを思いながら、可愛い妹の背を見送った。






 途中で別の侍女に発見され、あっという間に包囲網が築かれる。木の枝に飛び乗り隠れてやり過ごそうにも、この手はすでにバレていた。過去に何度も使った方法なので仕方ない。


「リン姫様、降りていらっしゃいませ」


 温厚なキエの声が、ついに怒りの色を帯びる。素直に謝りなさいと厳しく告げる侍女長に、アイリーンは壁を飛び越えてふわりと舞い降りた。


 長い裾が風に膨らみ、前襟を右左に合わせた和装ドレスが翻る。美しい蝶のように舞う姫の姿に見惚れかけたキエが、青ざめた。


「姫様っ! おみ足が見えてますわ!!」


 嫁入り前のお嬢様がなんてお姿に。そう叫んで卒倒したキエを、他の侍女が受け止めた。


 ごめんなさい。心の中で謝ったアイリーンは手を合わせたものの、そのまま着地して駆ける。この先は禁足地――皇国を滅ぼしかけた魔物が封じたと伝えられる土地だが、アイリーンには慣れた遊び場だった。いつも通りに獣道を駆けて、その先で木の根につまずいて何かを踏んだ。


 パキン……軽い音がして、薄い何かを踏み抜く。割れた物を確認したアイリーンは、ピンクの唇を手で押さえた。木札に墨で文字が記されている。


 やだ……封印の木札が割れちゃった!?







*********************

応援よろしくお願いします。

※2021年に連載した作品のリメイク、再連載です。完結までもっていきます(´▽`*)ゞヶィレィッッ!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る