17.まさかの盗賊達


「ファイアーボール!」


 アリサの威力調整をするついでに、俺達はモンスターを狩っていた。 


 嬉々として魔法をぶっぱなすアリサに、ヒャッハーって言いながら撃つの怖いからやめてくれないか……と思ってしまう。


 フェルスはちょこんと岩場に座ってアリサの魔法を眺める。


「フェルスもああいう魔法使いたいなら、アリサに教えてもらえばいいだろ」

「いえ、私は身体強化魔法以外よく分からないので。それにアリサさんの説明は何というか……ドッカン、ドーン! ってやると説明されたので」


 アリサなら言いそう。

 感覚派すぎるんだよなぁ。


 俺も人のことは言えないが。


 フェルスの魔法適性はAだったが、身体の成長に伴い既に上限を迎えている。

 だから、これ以上の魔法に対する伸びしろはない。


 ……打開策を知っていればいいんだが。指導者として情けないな。


「剣も伸びしろの限界を感じているんです。これ以上は壁があって超えられない気がして」


 俺はフェルスを久々に鑑定してみる。


 鑑定

【種族】エルフ

 フェルス 12歳♀ 状態:安堵


 適性

 魔力 極大 

 剣士 A / SS

 魔法 A / A

 器用 B / A

 忠誠 109

 

 ん!?

 忠誠って100超えるの!?


 今までここまで高い忠誠を見たことがないから驚きだ。

 ……どこまで伸びるか見て見たいな。


 思いっきり甘やかしてみよ……って違う。壁だ。


 AからSになるまでの差は経験じゃ埋まらないってことか?


 あとでフローレンスがどうやってSまで剣士を上げたのか聞いてみるか。


 最適解はフローレンスと戦わせることなんだけど、ガチで殺し合い始めそうで怖い。

 この二人仲が悪いからな。


 人を育成するのがこんなに難しいとは思っていなかった。


「ゆっくりやろう。時間はある」

「はい……」


 フェルスが落ち込んでしまう。

 気持ちは分かる。

 

 新しく入って来たアリサがあれだけの才能を見せたんだ。

 対抗心が芽生えて、劣等感に苛まれてしまうのも無理はない。


「ファイアーボールこそ至高! やはりあたしはファイアーボールの申し子なんだわ!」

「……アイツの【原初の火球使い】ってスキルじゃなくて呪いに思えてきたわ」


 どうやら威力調整のコツを掴んだようで、それに満足して喜んでいる。


 これで戦闘中にアリサの魔法に巻き込まれそうになることもなくなるな。 


 あとはアリサのスキルだ。詳細がまったく分からない。呪いじゃないなら俺は治せないんだ。


「だ、誰かーっ!! 助けてくれーッ!! 盗賊がっ!」


 響き渡る声にフェルスの耳がピクピクと反応する。

 俺にも聞こえたが、エルフであるフェルスの方がもっとはっきり聞こえたんだろう。


 アリサも魔法を撃つ手をやめ、何事かと見当たす。


「あっちです。あっちの方から声がしました!」


 助けた所で利益がないとは分かっていても、俺達は身体が動いていた。

 少し整備された小路に馬車があった。


 そして乗っていたであろう商人は怪我を負っていて、護衛の人間は誰かと戦っている。

 何で居るんだ。


「……何やってんだよ、お前」

「……あぁ?」


 チラつく狂気に満ちた瞳と目が合う。

 忘れるはずがない。今朝会ったばかりなのだから。


「アゼル」 

 

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