第11話 B級クエストへの推薦

 冒険者ギルドに戻ってきた俺はF級クエスト達成の報告を受付で行う。


「薬草10個の納品を確認したのでクエスト達成ですね」

「おおー、ありがとうございます。それから先ほど聞いた希少価値の高い万能草とマジカルハーブを採取出来たので買い取って頂きたいのですが」

「えっ、本当に見つけたんですか?」

「はい。それも群生地帯をそれぞれ見つけたので、それぞれ5個あります」

「……なかなかの強運をお持ちなんですね。とりあえず、鑑定室で鑑定してもらってもよろしいですか?」


 とのことなので、鑑定室へ。


「先ほど振りですね。どうされました?」

「素材を採取してきたので、鑑定してもらいたくてやってきました」

「冒険者登録してすぐに採取依頼を引き受けるとは、活動熱心ですね~」

「ええ。まぁ鑑定して頂くのはそのついでで見つけたものなんですけど」


 俺はそう前置きして、万能草とマジカルハーブを取り出した。


「こ、これは……!」


 カールさんの見る目が変わった。


「万能草とマジカルハーブじゃないですか……!」

「流石ですね。その通りです」

「す、すごい……う、うん……状態も良い。まさしく採取したばかりの万能草とマジカルハーブですね……! この短時間でこれだけの量を採取してくるとは……! 恐れ入りましたよ。翻訳の才能だけだと鑑定しましたが、本当は探索の才能もあるのかもしれませんね」


 カールさんは申し訳なさそうに頭を下げた。

 ……すみません。

 探索の才能はないんですけど、《素材探索》っていう反則じみた古代魔法は使わせてもらいました。


「万能草5個、マジカルハーブ5個を買い取りで価格は金貨3枚ですね」


 カールさんは引き出しから金貨を取り出した。

 銀貨100枚で金貨1枚になるので、銀貨30枚が10回、つまり金貨3枚だ。

 これで生きていくだけのお金には当分困らなそうだ。


「しかし、それにしても本当にすごいですね……良ければ、B級クエストを受けてみませんか?」


 おっと、カールさんからB級クエストの提案をされてしまった。

 ギルド職員からの推薦があれば受注出来るというやつかな?


 とりあえず、受ける受けないはB級クエストの内容を聞いてから決めることにしよう。


「どんな内容なんです?」

「場所は万能草とマジカルハーブが採取出来るルベループ東の森です。そこに万能草とマジカルハーブよりも希少で1年に1個見つかればいいとされている[妖精の花]を1個、納品するという依頼になります」

「1年に1個……とてもじゃないけど見つけられる気はしませんね」


 もうそれだけの頻度だと、生えていないという可能性も大いにあり得る。


「はい。だけどこのクエストの報酬は非常に高いです」

「ちなみにおいくらなんですか?」

「白金貨5枚です」


 白金貨は硬貨の中でも最高額のものだ。

 白金貨は金貨が100枚分なので、かなりの報酬額になる。


「……魅力的な報酬額ですね。でもクエストの期限ってどれだけの期間が設けられているんでしょう」

「一ヶ月ですね」

「ふむふむ。一つ思ったことがあって、この採取依頼は妖精の花を入手してしまってから受注すれば確実だと思うのですが、それはどうなのでしょう?」

「クエストを受注していない状態で見つけるのはまず不可能だと思います。クエストを受注してから一ヶ月間はギルドから探索用の魔導具を借りることが出来ます。高価で有用なものなので、これ無しで偶然見つけるというのは厳しいんじゃないかと思います」

「……なるほど」


 仮にクエストを引き受けるなら魔導具は別に借りなくてもなんとかなりそうだ。

 探索系の古代魔法は《素材探索》以外にもいくつか使えるから。


「ここで鑑定士を勤めて10年。これだけの短時間で万能草とマジカルハーブを集めてきたのは貴方が初めてです! ギルド職員の私が推薦するので是非引き受けてもらえないでしょうか?」

「罰金はどれぐらいになるんですか?」

「銀貨10枚ですが、今回は推薦という形になるので罰金は私が負担することになります」

「え? このクエストは多分失敗する可能性の方が高いですよね? どうしてそこまでして推薦して頂けるのですか……?」

「……実は娘が原因不明の病に侵されているのです。治すには妖精の花を材料とする秘薬──エリクサーが必要なのです……」


 エリクサーはどんな病をも治すと言われている秘薬のことだ。

 その材料に妖精の花が含まれている。


「もしかして依頼者って……」

「はい、お察しの通り私が依頼させてもらっています。白金貨5枚は私が出せる全財産です。ノアさん……良ければあなたの力を貸してもらいたい……!」

「……分かりました。ですがその前に娘さんの症状を見せてもらってもいいですか? 一応、医学の知識は多少あるので、もしも魔法で治せるならば、その場で治療も出来ると思います」


書庫で沢山の種類の本を読んでいたため、病気に関する知識は少なからずある。

古代魔法には病気を治す効果があるものもあるので、もしかするとすぐに治せるかもしれない。


「ほ、本当ですか……?」

「はい。カールさんがF級冒険者の俺を信じてくれるなら、是非全力で娘さんの病気を治したいと思います」

「ありがとうございます……! ノアさんのことを信じてお願いしてもよろしいですか……?」

「ええ、勿論です」


 俺がそう言うと、カールさんは眼鏡を外して、目頭をおさえた。


「すみません……ノアさん、本当にありがとうございます」


 震えた声でカールさんは言った。


「娘さんの病気、絶対に治しましょう」

「はい……! よろしくお願いいたします……!」




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