第7話 《従魔契約》
『よし、分かった! 我は従魔契約とやらを結ぶぞ!』
ファフニールの様子から、従魔契約がどういったものなのか何も分かっていないようだった。
それもそうか。
ちゃんと教えてあげないと分からないよね。
『ファフニール、従魔契約って何か知ってる?』
『ふんっ、そんなもの知らないのである』
『そうだよね。俺も少し配慮が足りていなかったよ。まずは従魔契約とは何かを教えるよ』
『内容がどうであれ、生き延びられるなら何でもいいのだ!』
『まぁまぁ、一応聞いておいてよ』
『そうか? それなら分かったのである』
俺はファフニールに従魔契約について説明をした。
まず従魔とは、主人に従う魔物のことだ。
主人が絶対遵守の命令を下せば、従魔は従う以外の行動は取れない。
この点について問題はないか、ファフニールに問う。
『問題ないのである』
即答だった。
……それを踏まえたうえで従魔契約とは、従魔になるための儀式だと伝えると、
『分かったのである』
……本当に分かっているのかな?
ちょっとファフニールが心配になっちゃうよ。
『どちらにしろノアには従うしかないのである! ノアの言うことが聞けないと我は殺されてしまうのだ』
『俺は殺さないから安心してよ』
『従魔契約を結ばないとノア以外に殺されてしまうのであるぅぅぅっ!』
『うーん、まぁそうなんだけどさ……なんかすんなり受け入れられすぎて平気かなーって、ちょっと思うだけであってね」
『なるほど、ノアは優しいのだな』
『そんなことないんじゃないかな?』
『そんなことあるのだ。優しすぎるのだ。だからノアの従魔なら喜んで受け入れることが出来るぞ』
『おおー……! それはとても嬉しいよ!』
ファフニールの言葉が胸に響いて、俺は少し感動した。
目から流れる涙を拭って、ファフニールに《従魔契約》を詠唱する。
これは心を開いてくれた魔物にのみ使うことが出来る古代魔法らしい。
だから、ファフニールが俺の従魔になる。
と、心に決めてくれたら正しく発動するはずなのだが……。
そう思っていると、足元に青色に光る魔法陣が出現した。
「あ、あなた……今何をしているの……?」
セレナさんは呟いた。
あ、セレナさんにはファフニールと従魔契約するということを伝えてないんだった。
忘れていた。
「今からファフニールと従魔契約を結ぶんです」
「ハ、ハァ!?」
呆れられてしまった。
でも、ファフニールを助けるにはもうこうするしかないんだ。
魔法陣がグルグルと回って、ぽんっ、とファフニールの巨躯を包む煙が発生した。
『おお、これはすごいぞ!』
煙の中でファフニールが喜んでいるのが聞こえてきた。
『一体何が凄いんだ?』
『見てみれば分かるぞ! ほら、煙が晴れてきた』
煙が晴れると、そこにはファフニールの姿が無かった。
「ど、どこに行ったの!?」
セレナさんが驚く。
「《魔力感知》」
ファフニールの魔力はこの場所に存在する。
だから消えているわけではないようだ。
『ノア、我はここにおるぞ!』
足元を見てみてる。
なんと、そこには小さな赤色の竜がいた。
『……従魔契約を結んだら小さくなったの?』
『そのようであるな』
『おお……じゃあどこに行っても大丈夫だな。まさかこんな小さい竜がS級モンスターのファフニールだとは誰も思わないだろうからね』
もともとの予定は従魔契約を結んでから《亜空間の扉》で、一時的にここではない別次元の空間にいてもらおうと思っていたんだけど、その手間が省けたね。
「ね、ねぇ……まさか……ファフニールってこの小さい竜になってたりする?」
「どうやらそうみたいだね」
「もう……一体どうなってるのよ」
「ははは、まぁこれで一件落着かな。こんな小さい竜をファフニールだなんて誰も思わないからね」
「そうね。あなたのおかげで何事もなく終われてよかったわ」
「役に立てたようなら何よりだよ」
「役に立てたとかそんなレベルじゃないわ。あなた一人で何百人、何千人と影響するような一件を終わらせたのよ。これは大手柄よ。……遅くなっちゃったけど、助けてくれて、あ、ありがとう……」
セレナさんは言葉の最後、恥ずかしそうに感謝を告げていた。
「気にしないでくれ。セレナさんを助けたかっただけだから」
「──ッ! そ、そう……! ど、どうして、わっ、わ、私を助けようと思ってくれたのかしら?」
「助けられるのが俺しかいないように思えたからかな。だから居ても立っても居られなくなったんだ」
「……凄いのね。ふふ、尊敬するわ。あなたの名前、聞かせてもらってもいいかしら?」
「ノアって言います」
「ノア……いい名前ね。私のことは知っているかもしれないけど、改めて名乗らせてもらうわ。私はセレナ。一応A級冒険者よ」
「じゃあセレナさんは俺の先輩って訳だね」
「先輩?」
「うん。俺はこれから冒険者になるんだ」
「……冒険者になんかならなくてもノアの実力なら宮廷魔術師にでも何でもなれると思うけど」
「そうですかね……。でも、仮になれたとしても今の俺はそれを望みません。これから俺は世界を旅しようと思っているので」
「ふーん、変わってるわね。でも、私もそんな感じだから人のこと言えないんだけどね。まぁいいわ。とにかく、これからよろしくね。ノア」
そう言って、セレナさんは俺に手を差し伸べた。
「はい。これからよろしくお願いします。セレナさん」
俺はその手を握って、微笑んだ。
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