第11話 追手
~領主ポルックス家の屋敷 スクロイの部屋 スクロイ視点side
「なに!? 『プロプスダンジョン』で見ただと?」
「ええ、あのお顔は間違いないです」
こいつはこの屋敷に出入りしている商人だ。たまたま『プロプスダンジョン』の管理ギルドに仕事を貰いに行っていた時にそこで兄貴……ディオを見たという。 俺は懐から小金貨一枚を取り出しこいつに投げ渡した。
「情報料だ」
こいつは下衆な笑み浮かべ小金貨を収め帰って行った。現金な奴だ。さっきまで『プロプスダンジョン』での商談が上手くいかなかったと愚痴っていたくせに。
「それにしても『プロプスダンジョン』でやすか、どおりで『イーダース』を探しても見つからないはずでやすね、いてててて」
役立たずの部下三人の内の一人がディオに斬られた腕をさすりながら言った。
ふん、傷は治っているはずなんだが、下手な芝居を……やはりこいつらだけじゃディオを追うにしても心許無いな――。
「おいお前ら! 闇ギルドに行って腕の立つ奴を二人――いや四人雇って来い」
「えっ? 闇ギルドでやんすか?」
「ああそうだ、お前らだけじゃ頼りないからな」
「くっ――わ、わかりやした。では依頼する金を――」
「――無い」
「「「えっ?」」」
「聞こえなかったのか? 金は無い、さっきの商人に渡した金が最後だ」
「ではどうやって……」
「いつものように屋敷にある高そうな物を、適当に闇市に売って来い」
「またでやすか……大丈夫なんでやすか? 流石にこれ以上はばれるのでは?」
「俺様は次期領主だぞ! この屋敷にある物は遅かれ早かれ俺様の物だ」
「――わかりやした、でも闇市に売るよりさっきの商人に売った方が高く買い取ってくれるんじゃ?」
「お前は馬鹿か! この屋敷に出入りしている商人に売ったら、親父の耳に入る可能性があるだろ!」
「さっきはこの屋敷にある物は自分――」
「――黙れ!」
三人は慣れた手つきで屋敷の中から高そうな物を見繕い、荷馬車に積み込んでいく。
「急いで行って来いよ、出来れば今日中に出発したい」
詰み終わると三人は闇市へと急いで向かった。残った俺様は部屋でディオの事を考えるが、そのたびにイライラした。
「くそが! ムカつく――そろそろ親父も王都から戻って来るだろうし、急いで追いかけて始末しなければ」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
~プロプスダンジョン ディオ視点side
俺はあれからソロで毎日ダンジョンに潜っていた。六階層から十階層までの
敵とある程度戦い、特に欲しい技も無かったので十階層のボスであるサンダーワームというバカでかい芋虫の魔物を倒し、ダンジョン管理ギルドに戻った。
ちなみにサンダーワームを倒した時のドロップアイテムはいつもの様に魔石だった。本当に魔石以外出るのだろうか? 未だに魔石しか出ないんだが……。
その時にギルドの窓口でお姉さんから十一階層以降はトラップが仕掛けられているとの事で、感知系のスキルやアイテムを持っていないなら、また案内役を雇った方がいいと提案された。
今まで結構な数の魔石を換金して金には余裕があったので、とりあえず十五階層までの案内人をお願いした。
…………
しばらく待っていると俺より少し年上で露出が多めの装備をし、金髪の長い髪を後ろで束ね、俺と同じくらいの身長でスタイルの良い、どこかで見たことがある美しい女性が笑顔で現れた。
「やあ久しぶりだね、忘れているかもしれないので自己紹介をしよう。私の名前はレダだ。宜しく頼む」
「レダさん!? いや流石に覚えていますよ、でもどうして?」
「前にも言っただろ、趣味だよ」
「ディオ様、今回はちゃんと十五階層まで行ける案内人の方がいらしたのですが、その、レダ様がぜひ自分が行くとおっしゃられまして……」
「おい、言わないでおくれよ、何か恥ずかしいだろ――そういえば三十階層のボスを倒したパーティーが現れたらしいぞ。では早速行こうか」
何かあからさまに話題を変えてきたけど、まあいっか。
レダさんから毒矢のトラップもあるから毒消しも念のために買っておいた方がいいと言われ、お弁当と毒消し、ポーションを購入しダンジョンに向かった。
ダンジョンの入り口から十階層のボス部屋の後ろの小部屋に転移し、そこから階段を使って十一階層に下りた。
十一階層は壁も床も天井も石の様な材質で出来た回廊エリアになっていた。そして出現する魔物はほとんどが大コウモリという飛行できる魔物だ。
「少年は放出系の技は持っているかい?」
「俺が持っているのは『ライトニング』くらいですね」
「『ライトニング』――もしかしてサンダーワームからかね?」
「はい、十階層のボスのサンダーワームの技をマネしました」
―――――――――――――
『ライトニング』:相手に雷を落とす。また麻痺効果も付与する。
―――――――――――――
「飛行できる魔物に対しての攻撃の手段があるなら一応問題ないな、行こうか、ああそうだ! その『ライトニング』なんだが下階層のボスに雷属性が有効な魔物が居るから消さないでおいた方が良いぞ」
「え? あ、はい」
バサッバサッ
暗闇の中から飛んでくる大コウモリを片っ端から『ライトニング』で撃ち落としていった。どんどん飛んで来る。しかし相変わらずドロップアイテムは魔石だが。
≪ピコン! 『ものマネ』スキルがレベル7になりました。『顔マネ』を覚えました≫
おっ!? やった! 久しぶりにスキル技を覚えた。
「どうしたんだ? 嬉しそうな顔をして」
どうやら顔に出ていたらしい。
「あ、いえ、その、スキルのレベルがあがって新しい技を覚えたのでつい」
「ほう、興味があるな。よかったらどんな能力か教えてくれると嬉しいのだが」
「あ、はい、いいですよ、ちょっとまってください。『ステータス』!」
―――――――――――――
ディオ (男、15歳)
種族:人間族
冒険者ランク:D
ジョブ:ものマネ士
スキル:ものマネ Lv7:『声マネ』、『技マネ』、『魔法マネ』、『顔マネ』
スロット1:『スライムの鳴き声』
スロット2:『円月斬リ』※東洋剣術Lv4の技
スロット3:『二連斬り』※中級剣術Lv2の技
スロット4:『ライトニング』※中級攻撃魔法Lv3の技
称号:『スライムキラー』
―――――――――――――
『顔マネ』:対象となる人物(亜人を含む)の顔のみをマネることができる。取得条件は対象となる人物を一度実際に見なければならない。魔物や動物は不可。効果は自ら解除するか意識を失うまで有効。
―――――――――――――
情報が頭の中に流れてきた。なるほど。
「えーと、なんか顔だけ他人に変装することが出来るみたいですね」
「何!? 変装だと!? それは面白そうだな、見せてくれないか?」
「いいですけど魔物とかはダメみたいなので、今変装できる対象はレダさんしかいませんけど……」
「私で構わないぞ、いや、逆にぜひ私で頼む!」といい俺の両肩を掴み、ぶんぶんと揺らしはじめた。
「わっわかりましたから、そんなに俺を揺らさないでください」
「おお、すまない」
「でもここじゃ魔物も出ま――」
「――よし急いで十五階層の『セーフティエリア』に行こう」
レダさんは俺の言葉を遮るように言って腕を引っ張り、すごいスピードで進むのであった。
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