万能の付与魔術士(エンチャンター)。ただのバフ使いと思われていましたが、実際はあらゆる事をこなせる無限の魔術士でした。
ミコガミヒデカズ
序章 付与魔術士、勇者パーティに追放される。
第1話 聖王国カルアリン。終わりの始まり
「ロクに戦いもしねーで勇者パーティの一員とかおこがましいんだよなあ!」
「そーそー!アタシの魔術があれば全部事足りるワケだしぃ!」
「古(いにしえ)の大魔導師の直弟子(じきでし)って言うから期待してみりゃあよォ、やってンのは効果があるのか怪しいおまじないみてえなモンだしよォ!」
仲間たちの俺への罵倒が響いていた。勇者グリウェル、女賢者オボカ、戦士マケボの声。
こいつら三人に俺…付与魔術士マリクを加えた四人がつい一週間前に王城を出発した当代の勇者パーティである。
「俺の付与魔術(エンチャント)はあらゆるものを強化している。その結果がこの戦果だという事がなぜ分からない?あれだけの数の魔物と戦い続けられる
俺の言葉にグリウェルたち三人は侮蔑の表情を浮かべる。
「ハッ!何が付与魔術だ?テメェこそ俺たちの実力で討伐した功績のおこぼれに預かってるだけじゃねーか!王様ァ、聖王国公認の勇者サマに楯突くようなマネするコイツを許して良いんですかァ?」
「そーよ!付与魔術なんて無くても攻撃魔法でどんな敵も一網打尽よ!」
「それに魔法が効きづらい敵なら我が戦斧(せんぷ)がたちどころに両断してくれよう!こんなゴブリン一匹斬り殺せもしない輩(やから)など何の役にも立たんわ!」
王様はフム…とアゴに手をやり何か考えたような素振りを見せるとやがて口を開いた。
「勇者グリウェルよ、そなたの申し出はもっともである。役立たずはこのエセ魔術士に他ならぬ」
「ッ!!?陛下、俺…いや私の言い分は聞くに値(あたい)しないと?」
「誰が質問を許したッ!?このうつけ者めが!」
俺の問いかけに王は怒りの表情を見せながら声を大にする。
「いくらオマケで付いて行っただけとは言え今回の戦果に免じて罪を問う事はせん。ただちにこの場を立ち去れ!城にある貴様の持ち物全て痕跡さえ残さず持ち帰れ。不快極まり無いッ!分かったらとっとと出て行くがよい!」
…そうかよ。これが働いた者に対する聖王国の仕打ちって奴かよ。分かった、それなら出て行ってやる。
ただし…、後悔はしてもらう。
王に退去を命じられた俺は謁見の間からつまみ出そうとする衛兵に他人(ひと)の手は借りない、自分で出られると告げ振り返る事無く退出する。
こんな所、二度と来るかと思いながら。
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