55. 富籤文庫

富籤文庫とみくじぶんこ 創刊!!】

 いつもお金が足りないあなた様へ。毎日、お疲れさまです。

 「パッ」と使ったオケラ時ひとときに、是非お読みになってください。

 一等・前後賞合わせて、なんと三〇〇万円!

 一冊四〇〇円ぽっきり。(ネット通販限定・送料無料)

 ご購入申し込みと同時にあなた様が選ぶ「富籤番号」が登録完了。

 毎月十万冊限り。必ず当たりが出版されます。

 抽選は月末最後の日曜日に特設会場にて実施!

 創刊・十タイトル全十万冊 四月一日発売開始!!


[第一回ラインナップ]

 福沢諭吉『学問のすすめ』・・・・・00000 ~ 09999

 新渡戸稲造『教育の目的』・・・・・10000 ~ 19999

 樋口一葉『たけくらべ』・・・・・・20000 ~ 29999

 夏目漱石『吾輩は猫である(上)』・30000 ~ 39999

 夏目漱石『吾輩は猫である(下)』・40000 ~ 49999

 紫式部『源氏物語(全巻)』・・・・50000 ~ 59999

 落花傘飛高『源氏物語・エロ訳1』・60000 ~ 69999

 落花傘飛高『源氏物語・エロ訳2』・70000 ~ 79999

 谷沢辛子『伊藤博文暗殺の裏情報』・80000 ~ 89999

 谷沢辛子『嗅がせてあげるねっ!』・90000 ~ 99999


 一攫千金、ねらってみませんか! そしてオケラとの別れ……。


〔必ず貰える〕キャンペーンやります!

 富籤文庫三冊につき「三百万円札ブックカバー」を一つ同封いたします。


 ――課長、是非とも率直なご意見をお願いします!

 ――景品表示法に引っかかるのじゃないか、これ



「――と言うことだったんだよお」

「わっはははははぁ~。ホントにプレゼンしちゃったんですかぁ、先輩」

「笑いごとじゃないよお、ワサビ君!」

「わははは、済みません済みません。あんまり可笑しかったもので。でも普通冗談だって気付くでしょう。先輩もその課長を騙そうとしたんじゃないんすか?」


 そんな訳ないだろう。そりゃあよく確かめなかったぼくも悪いけど、あんな冗談を大まじめに聞かせてあんまりだよ……。


「……あ、でもね、名前はそのままで、景品表示法に引っかからない範囲のキャンペーンなんかをやってみたらどうかって方向に話が進んじゃってね。もしかしたらそれで企画が通るかもしれないよ」

「へえー、瓢箪から駒って訳ですかぁ。わははは」

「まあねえ」


 やれやれ、ワサビ君は笑ってばかりだし。これじゃあまるで酒の肴だよ。

 あぁ~あ、つらいなサラリーマンってのは。ぼくもワサビ君みたいに脱サラできたらなあ……て、でもやっぱりぼく社長って柄じゃないだよな。とほほほ。


「ところで先輩、また何か面白そうな原稿書けませんかねえ」

「えっ、また例の女性雑誌かい。でもこの間は大変だったんだよ」


 実はこの前、女性雑誌向けにエッチな話を書いたんだけど、桜多オウタ彼方左アチサと言うペンネームで載るはずが、手違いでぼくの実名で載っちゃってさ。偶然それを読んだワラビからこっぴどく叱られたんだ。


「あーあれは申し訳なかったす。もうあんなヘマしませんから。何か書けたらまたお願いしますよ」

「そうかい。そこまで言うのなら、またやってみるかなあ」

「おっ先輩、その意気ですよ、その意気。わははは」


       ◇ ◇ ◇


 ぼくは桜多彼方左となって再びペンを握った。ぼくはやるぞ。ぼくの男らしさをワサビ君に知らしめしてやるんだ。いやワサビ君だけでなく、今の世の中のひ弱な男子たちや、やたらと態度の大きい女たちにもな!

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