24. 放送業界と通信業界の戦い

 ナラオちゃんは家にかえった。お兄ちゃんはアタシが追いだした。

 そして取材もそこそこにして本日は終了。明日また落花傘先生の家で続きをすることになった。

 それでアタシもお風呂に入って部屋でのんびりしてたら、またきた。


「キノコにちょっと聞きたいことがあるんだよ」

「なによ」

「落花傘先生、オレのこと何か言ってなかったか?」

「なにも」

「そうかぁ」


 お兄ちゃん、たぶん取材してもらうことを期待してるのね。ちょっとからかってやろうかしら。


「もしかしてお兄ちゃんも連載小説のモデルになりたいとか?」

「別に」

「そうよね。無職だもんね」

「あのなあキノコ。小説のモデルになるのに、職の有無なんてあんま関係ないんじゃないのか? ニートを題材にしたって構わないんだし」


 まあそれもそうね。だけどね、お兄ちゃんだとね。


「でもお兄ちゃんがでたらコメディになっちゃうよ」

「いや、オレはシリアスだってちゃんとこなせるぞ」

「そうかしら。きっとシリアスが吹きだすわよ」

「お前バカじゃないのか。シリアスは人の名前なんかじゃないんだぞ。吹き出す訳ないだろ」

「そんなことわかってるわよ!」


 もー冗談一つまともに返してくれないんだから。わかってるくせに。ホントにくらしいわあ。


       ◇ ◇ ◇


 昨日に引き続き、落花傘家の客間で取材中。


「――つまり放送業界と通信業界の融合は避けられません」

「そうか」

「てゆうより既に融合してます。もうそんなのは何年も前から主張され続けてきたんですもの」

「ふむ」

「だから今さらって感じなんです。寝ぼけてんなってことです!」

「ふむ」

「ですからアタシがはっきり主張したいのは――」


 てあれ先生寝てる?


「ふにゃ」

「先生、起きてくださいよ。なに寝ちゃってんですかっ! 落花傘先生!」

「は! おお、松茸御飯?」


 だーかーらぁ、寝ぼけてんなっつーの!


「先生、しっかりしてください」

「ふむ。平気だ。放送業界と通信業界との萌える様な熱き戦いについてだな」

「え?」

「それにはやはり双方が萌えきゃらを出すべきだ。萌えーで燃えーなのだ」

「へ?」

「放送業界代表の萌えきゃらは、てれっ

「あのう」

「対する通信業界からは、こみゅっ

「先生?」

「二人とも十一歳の元気一杯電波っ。てれっ娘は白い半袖の体操着と赤いぶるーまー。こみゅっ娘は薄桃色の特製学校水着を着用しておる」

「はあ?」

「てれっ娘は跳び箱の上で尻餅をついて『また失敗しちゃった。てへへ』と云い、こみゅっ娘は浮き板を使った蛙泳ぎの練習で『やあん痛~いぃ。足がつっちゃったよぉ~』と云うのだ。萌えるではないか~。そう思わぬか? おやキノコちゃんは何処へ行ったのだ。もしかして小用かな? あいやいや女性の行き先を詮索してはいかん。ふぉふぉふぉ」


 あーもーダメだぁ。完全ロリコン変態ジジイ作家だわ。

 アタシはイヤになったから、おはるおばあさんに挨拶だけしてかえることにした。


「おおおお、キノコちゃん。ここにおったのか。小用の方はもう済んだのか?」

「違います」

「ふむ。大?」

「だから違うっつーの!」

「おおそうかそうか、月経帯を取り替えておったのだな。あの褌の様な奴を」

「そんなの使ってません! もうそれ以上いったらホントにひっぱたくわよっ!」


 やっぱダメだわ。セクハラ変態エロジジイ作家だわ。


「承知承知。もう云わぬ。まあそれは兎も角としてキノコちゃんにこれを渡そうと思うてな。少ないが取材の謝礼だ」

「あ、そうだった。ギャラでるんでしたね。遠慮なくいただいときます。それとアタシもうかえりますから」

「ふむ。車に気を付ける様にな」

「はあい」


 やれやれ。でもこの祝儀袋大きいわね。どんだけ入ってんのかしら?

 まさかこれで二百円とかってことないわよね?

 そんなだったら、絶対にひっぱたいてやるんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る