22. 山林茸子の話(前編)
これで一通りは話し終えたわ。
「――とまあ昨日の夜してたお兄ちゃんとの会話は、こんな感じでしたね。大体いつも似たようなものですけど」
「はははは、仲の好い兄妹なのだな。ふぉふぉふぉ」
「よくないです!」
「だが一緒にお風呂に入ったりするのは仲が好い証拠だ。クリオ君の様な優しいお兄さんがいてキノコちゃんは幸せだな」
「だから入ってませんてば! しかもぜんぜん優しくないんだからっ!」
今アタシの部屋に、隣の隣に住んでる
アタシの部屋の様子なんかも参考のために見たいそうよ。たぶんただの口実で部屋に入りたいだけなんだと思うけど。
で、アタシの名前だけど、
「キノコちゃん。年齢は既に公表済みであるから隠さずとも好い」
「な、なんですと! 先生、それってプライバシーの侵害ですよ」
「ふむ。そうかそうか。ではなかった事に……」
「なるわけないでしょ。もー個人情報のとり扱いにはくれぐれも気をつけてくださいよぉ。アタシだからまだよかったものの、ほかの人だったら先生訴えられたりするかも知れませんよ」
「承知承知。ふぉふぉふぉ」
「やれやれ」
連載第六回目のヒロインとしてアタシを選んでもらえたんだけど、でもやっぱり不安になってきた。だってこの先生、変態作家なんだもん……あーあ、断るべきだったかしら。
「だが、この部屋は好い匂いがするなあ」
「それほどでもないと思いますけど。アタシ今日は香水とかつけてないし」
ほら始まった。どうせ若い女のニオイだとかなんとかエロいこというんだわ。いやあねえ、ジジイのくせに。
「いいや何と云うか、あれだ。そうだそうだ松茸の香りだ」
「はあ?」
松茸は確かにいい香りという人多いかもしんないけど、若い女性の部屋がそんなニオイだってのはどうなの?
「はははは、冗談冗談♪ キノコに引っ掛けただけだ」
「……」
一度ひっぱたこうかしら?
「だがそんなにパソコンに向かいっぱなしだと肩も凝るであろうて。会社でもパソコンなのであろう。吾輩が揉んでやろうか、そのおっぱい」
「うふふ。落花傘先生?」
「ふぉふぉふぉ。何だ?」
「いくら先生でも次いったらひっぱたくわよ」
「ひっ!! もぉ云いましぇん」
ふふふふ。ビビってやんの、この変態ジジイ。
「先生、そんなに怯えないでくださいよ」
「とても怖かったのだ。くわばら、くわばら。だが一体どう云う仕組みで、その高くて可愛い声が一気に下がって、先程の様などすの利いた低い声になるのだ。何か機械を使っておるのか?」
「そんなわけないでしょ。女はですね、いくつもの顔と声を持ってないと、今のこんな世の中、やっていけないんですよ」
「ふむ。そういう仕組みだったか。納得した。ふぉふぉふぉ」
ホントに納得してるのかしら? いまいち信憑性に欠けるわね。
「あ、それよりも先生」
「何だ?」
「先生ってロリコンなんでしょ?」
「ふむ。その通りだ」
「なのにどうしてアタシのような大人の女性を取材したりするんですか? おっぱい揉んでやろうかとか先生らしくないですよ。揉めないくらいの大きさが好きなんでしょ?」
「好く判っておるな。実は先程のは奉仕精神と云う物なのだ」
「は?」
「ふむ。成人男性誌の読者諸兄は、ボインちゃん好きが多いのでな。キノコちゃんの様にまだそれなりに若くて、おっぱいが大きくて見た目が可愛い女性は人気があるのだ。まあ可愛いより綺麗が好いと云う読者諸兄や、吾輩同様おっぱいぺちゃん
「ふうん」
「処でキノコちゃん」
「はい」
「キノコちゃんは、新聞社か出版社かにでもトラヴァイユする積りなのか?」
「いえ特に。あ、でもどうしてです?」
「ブログやら何やら好くは判らぬが、その様な物に熱心になって度々情報を発信しておるのであるからな。それで、もしやそうなのかと思うたのだ」
「そういうことですか。でもブログとかそんなの誰だってやってますよ。まあ確かに女性編集長とかって憧れますけどね」
「ふぉふぉふぉ。そうかそうか女性編集長か」
「はい。今よりお給料もぐーんとあがるかもしれないし」
「ふむ。それではキノコちゃんは、出版業界の国内総売上高と乗用車の製造業者で第五位辺り一社だけの国内売上高とで、どちらが上だと思う?」
「乗用車メーカー第五位辺りの方がまだ上でしょ」
「ほほう即答か。何故判った? 知っておったのか?」
「そんな出題のしかただと誰だってわかりますよ」
「おおそうか、それもまあそうだ。ふぉふぉふぉ」
「それで先生、なにがいいたいんですか?」
「車も好いけど書籍もねっ!」
「は?」
「それと、車に飽きたら雑誌もねっ!」
「へ?」
わけわかんない。だいじょぶなの? このジジイ作家。
「まあ異業種の売上高を比較した処で、何の意味もないがな」
「まぁそうですね」
だったらそんな話持ちだしてくんなっつーの!
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