02. 原稿二十五枚
「あっ先生、おはようございまーす。原稿上がってます?」
男が一人、吾輩の書斎へ勝手に入ってきよった。
「ふむ。きたか
「ホッ。どうも有り難うございまーすって、たったの八枚? 困りますよ先生。二十五枚の約束でしょ。お願いしますよ、もー」
どうやら吾輩は枚数の事をすっかり失念していた様だ。
「だがまあ序章であれば、これ位で好いのではないかな」
「いやあ、そう言う問題じゃなくて、雑誌にはスペースってのがあるんですよ。何度も言ってるでしょ。もーまいったなあ」
「それなら挿し絵で胡麻かすと云うのは?」
「挿し絵のスペースは別ですよ。本文スペースの三分の二をさらに挿し絵で埋めるなんてあり得ません」
「ならば写真はどうだ。写真も載せるのであろう」
「それは、これの次の号で特集組むんですよ」
「ふむ。そうだな。それではこうしよう。この間見せた短編を載せれば好い。そうだそうだ、そうすれば好い」
あの短編はまだ何処にも出してはおらぬ。
ふむ。好かった好かった、あーかっぽれかっぽれ。
「何言ってるんすか先生。連載に全く関係ない別のあんな短編小説なんて載せられませんからね」
「まあそう云うな。初回のみそう云う趣向も好いではないか。初回限定版だ。それ位はお前が社長なのであるから可能であろう」
この谷沢と云う男は、三年程前に自ら会社を辞めて、小さいながらも出版社を立ち上げたのだ。
だが、何分零細な物であるから、社長自身がこうして原稿を取りにくると云う次第である。谷沢が編集者として歩み始めた新米社員時代の頃から、思えば吾輩とはもう長い付き合いなのである。
「もー先生、いつもいい加減なんだから。まあでも時間がないですし、今回限りですよ。次からはどんなことしても枚数は守ってくださいね。もちろん締切りもですよ!」
「済まぬなあ谷沢。ではそうと決まったら合計で丁度二十五枚になるから、さっさと持ってけー」
「わかりましたよう。でも次はもうこんなの認めませんからねっ!」
「承知承知。ふぉふぉふぉ」
ふ~~、やれやれだ。谷沢は去った。
彼奴は、吾輩の家の隣に住んでおる
おお、そうだそうだ。連載には彼奴ら谷沢家の者にも登場して貰う事にしようではないか。そうでもしない事には人数が足りぬのであるからな。
ふむ。まあこれで一仕事終えたのであるから吾輩はもう寝る事にしよう。夕方になれば又、テレビアニメイションを見なければならぬのであるから。
◇ ◇ ◇
来週以降も楽しみですね。ボリュームも三倍になりますよ。次回はですね、そうですねえ、ちょっとだけ紹介しちゃおうかなあ。
次号掲載の一章は、落花傘家の隣家主人・
さあどんな話になるのでしょうね?
ぜひ楽しみにしていてくださいね!
そしてもう一つあるんです。
なんと今回は連載初回限定特典として、落花傘先生の最新短編小説をどどお~~ん、ぱぱ~んと掲載しちゃいますよお。
スゴいですね。嬉しいですねえ。読みたいですね~。
それではさっそく読んでください。(いやあぁ、小説ってホントおもしろいっすね)
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