ゼットライフ
門前払 勝無
第1話
Z life 1
その光景を見たとき不思議と受け入れられた。
人間の形をしたモノが人間を食べているー。
人間が動物の肉を食べるのと何ら代わりはない。
ただ…ただ、それはキモいだけであった。
奴等が現れたことであっという間に今までの生活を無くしてしまった。FacebookやTwitterで面白半分に奴等の動画や情報をアップしていた奴等もだいぶ少くなってきている。
頭を破壊しろ、首を落とせ、どこどこが安全だ。政府の陰謀で人口を減らしている等と言う情報が飛び交っていたが、それもほぼ無くなっている。
安全な場所などは“奴等”が現れる前から無い。
俺はひたすら奴等から逃げることにした。
幸いこの土地は人口が少ないから大勢の奴等と会う機会が限られている。人間だった頃の習慣が残っているのか、人間が集まりそうな場所に貯まっていくのである。
甲斐駒近くのキャンプ場にコミュニティ跡を見つけた。
コミュニティ跡と言うのは人間達が集まって生活していた場所という意味である。いくつかのテント、キャンピングカーがある。
俺はトビを持って軽バンから降りた。
欲しいものは、食料とガスボンベと着替えと電池と靴と…。取り合えず使えそうな物を探そう。
キャンプ場内の木にロープを結んで、隣の木にも巻いた。それを繰り返しながら一つ一つテントを漁っていった。
ロープで結界を作っておけば大勢の奴等が襲ってきてもある程度は時間が稼げるのである。これは以前、コンビニに入った時に編み出した方法である。奴等が居ないのを確認しながら使えそうな物をテントから出していった。慌てるとろくなことがないから品定めしながら漁っていく、ある程度の品物をチェックしてから軽バンから一輪車を出して物を運んだ。
車に積込み終わると、奥の林の中から一匹出てきた。
格好からするとキャンプに来たセレブ…。
一流アウトドアブランドに身を包んだ奴だ。無視しようとしたが…かなり素敵な腕時計をしている。
悩んだが、一匹だけしか見当たらないから腕時計を拝借することにした。
まず、ロープを絡ませて奴を転ばせた。脳天を狙ってトビを振った。かなり上手くいって仕留めることができた。
「やったね!CASIOのプロトレック!あ、これソーラーじゃん!ラッキーだな」
まだ、腐敗が進んでいないようだったから奴の靴も頂いた。
俺は消防団の詰所を取敢えずの寝床にしている。
一階は車庫で屋内から二階に行けるので便利な建物である。
天気の良い日は火の見櫓に登って一夜を過ごす。景色も良いし奴等が来ても直ぐに対応出来るのである。
たまに車が走ってるのも見るのだが、俺はほっておくことにしている。
前に俺もコミュニティに避難したことがあったが、人間関係がギスギスしていて結局は派閥から抗争になり壊滅してしまった。そのときに知り合ったおっさんから銃と弾をもらったのだが、銃を使うと奴等がやたらと寄ってくるのである。だから、万が一の時にしか使わないようにしている。
俺はコーヒーを持って火の見櫓から夕焼けを眺めた。
心が落ち着いていて景色をこんなにも優雅に楽しめて…奴等が現れる前よりも…何故か楽しめている。
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