逃げなきゃ
宮瀬 みかん
エンド3
はぁ、はぁ。
逃げなきゃ。
あいつから逃げなきゃ。
ここはどこかの廃ビルのようだ。
人気はない。
人の気配は。
所持品は、スマホ(圏外)のみだ。
怖い。耐えられない。
出口は見当たらない。ここが何階なのか、今が何時頃なのかもわからない。
「助けて」
祈りを込めて絞り出した声はひどくか細く掠れていた。
訳もわからず、逃げになっているのかもわからず歩く。
歩いた先に、階段を見つけた。
一筋の光が見えた。
先程窓から外が見えたので、ここは地上なのだろう。では、ここを駆け下りれば、1階にたどり着く!そうすれば...。
...。
..........ガツン...
私は一瞬頭が真っ白になった。
階段の奥底から、聞こえるのだ。
あいつの、足音が。
.............ガツン.....ガツン....
上に向かってきている。
心臓が跳ね上がった。
どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。
動悸が、冷や汗が、涙が。
ピロリンッ。
びくっとした。あいつに気づかれる。
さらに鼓動は跳ね上がる。
震える手でスマホを見る。通知が一件。
「ななななんと!今のこの状況を回避するどころか、救済できる手段があるよ!」
私はもうこれしかないと思った。これに頼るしかないと思った。
「ここは2階。まず5階まで駆け上って!gogo!」
疲労困憊の足で震えながらも全力で階段を駆け上がる。あぁ、今2階だったんだな...。
もう足の感覚がない。疲れた。早く終わらせたい。
「5階まで登ったら右奥に窓があるだろ?その窓を開けよう!」
何となく察していた。
私は窓を開けた。涼しい風が髪を靡かせる。
「窓を開けたかい?それじゃあ」
「そこから飛び降りるんだ、サヨナラ」
窓から見える風景はどこか懐かしくて、涙が出た。
私は飛び降りた。
逃げなきゃ 宮瀬 みかん @v4_mikan
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