雨花火
夜月
第1話
雨が降っていた。星は視えない。夜は濁って僕たちを包む。
傘はあるのにささない。さす理由が見つからなかった。僕は君を視ていたい。記憶という景色に君を残したかった。
広い世界に君と僕だけがいる。そう ここは君と僕だけが視てる景色だ。他の誰にも視えない そういう特別な景色だ。
グラウンドの片隅で花火をしよう。雨の中
蝋に火をつける。その小さな灯火はとても綺麗だった。今にも消えそうな光だ。まるで僕の人生を映し出してるみたいに消えそうだ。
君の花火に火が灯る。ジリジリと燃えて色鮮やかな光を放つ。君と花火は濡れていく。そして花火は消え終わりを告げる。
どのくらいだろう。時間的には数十分だ。
君は笑う。僕は花火より君の表情に目を奪われる。そんな夜だ。
雨が激しさを増す。土は泥と化し、僕たちは屋根のある場所へ移動した。
もう手持ち花火は出来ない。だから君の好きな線香花火をしよう。そう思って線香花火を取り出した。大半が湿気ってしまっていた。ムカつくから丸めてしまった。出来なくなってしまったから仕方がないか。
残りの線香花火は無事だ。本数的には数十本くらいだ。一本を君に渡し火をつける。小さな花火は激しく燃え 空気中に無数の光を放ったのち切なく消えていく。美しさと儚さを持ち合わせた線香花火。君が好きな線香花火。写真に収める間もなく終わっていく花火を君と一緒に時間を忘れていつまでも続けたいと思った。
そうだ。この花火は
雨花火
世界中で君と僕だけが知っている花火。
湿気った空気の中 君と僕は日が登るのを待っていた。
今度は晴れた日にやろう。そう約束をした。普通の花火ではない。
晴花火
続きは君と描き始めよう
雨花火 夜月 @Yotsuki1014
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