行動の意味

@jijinosunege

第1話 プロローグ

ベッド脇のサイドテーブルにある目覚まし時計が大きな音を立て、響き渡る。

中塚は時計の甲高い叫び声を聞きながら、冬の朝は非情だと思った。一歩ベッドを出れば、そこは冷たい床である。もっと寝ていたい気分なのに。仕方ない。

中塚はいつものように窓を開け、空気をお腹いっぱいに吸い込む。

窓の外を見ると、街はもう動き出していた。通りを行くディーゼル車の音、ピザ屋の窯を出す音、眼下に広がる西洋風の建物は、日本のそれとは全く違う様相を醸している。

「こういう風景もたまには良いか」と自身を納得させ、スーツに着替えネクタイをきつく締めた。今日は初出勤なのだ。


話を少し前に戻そう。中塚は1週間前まで東京都の自治体で働いていた。中塚が配属されていた部署は平時ですら午前様が当たり前であったが、昨今のコロナ事情により、更に多忙を極めていた。

中塚は学生時代から頭がずば抜けて良く、仕事もテキパキとこなすことができ、昨今の情勢でも毎日定時退勤を行うことができた。ところがそれを不快に思う職場の人間との軋轢が生じ、退職届を提出したのである。

しかし、中塚に限って無策では無い。退職後は、友人が勤める、IT会社に雇用してもらえる段取りがついていたのである。

中塚は英語や中国語はもちろんイタリア語、ドイツ語、フランス語を話すことができた。

これが決め手となり、勤務地はここイタリアとなったわけだ。









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