第35話
それから一週間後。
「すごい……こんなに早く書き上げるなんて!」
のんびりやっていたので怒られるかと思ったのだけれど、姫宮さんは楽譜を見るなり俺のことを絶賛してくれた。
「そんなことないよ、時間はかかっちゃったけど、中身には結構こだわったよ!」
そう言うと、彼女の目はものすごく輝いていた。
そこまで音楽祭のことを楽しみにしているのだろう。
「ありがとう川崎君! さっそく先生に渡してくるね!」
彼女はそう言って、足早に教室から去っていった。
今だから言えることなのだけれど……。
本当は、あの曲は2,3日で完成させられていたんだ。
だけれども、歌詞に難しい言葉を詰め込みすぎたせいで、微妙な感じになってしまって……。
そんな回想をしていると、クラスメイトが寄ってきた。
「もしかして、川崎って姫宮と付き合ってるのか?」
「そんなわけないだろ、だいたいどこをどう見れば、付き合ってるように見えるんだよ!」
「だって、最近毎日のように話しているだろ? だから、てっきり付きっているのかと思ったんだけどなぁ……」
そう言うと、クラスメイトは首をかしげていた。
言われてみれば、確かに……最近はものすごく話しかけてくるし、音楽祭に関係のない話も振られた気がする……。
だけども、俺には平井さんがいるしなぁ……。
そう思うと、頭を抱えずにはいられなくなった。
「そういえば、もう曲完成したんだろ?」
「うん、さっき姫宮さんに渡したから、今日中にはみんなに届くと思うよ」
「そっか! 楽しみだなぁ……期待してるぞ!」
放課後。
今日こそは平井さんと話したかったのだけれども、姫宮さんから
『大事な話がある』と言われたので、別々で帰ることになってしまった。
はあ、最近会えていないなぁ……。
メールは毎日のようにしているのだけれども、やはりそれだけだと……ちょっと寂しいなぁ。
それにしても、いったい何の用なのだろうか?
「曲自体は完成したから、歌詞の誤字脱字が見つかったのかもしれないし、そもそもおかしいところがあったのかもしれないなぁ」
いつもは内容を教えてくれるのに、今日だけは”大事な話がある”とだけしか、伝えてくれなかったので、どんな話をされるのかが予想できなかった。
「お待たせしました、川崎さん!」
「それで、話って何?」
「ここ一週間あなたのことをじっと見てきました。も、もしよければ、私と……つ、付き合ってくれませんかっ?!」
ま、まさかの告白?!
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