胆管にチューブ突っ込んで膵炎になった

 さて、お腹からチューブを生やして約10日。

 なかなか胆汁漏たんじゅうもれが止まりません。

 その間に、たんのうえん仲間は元気に退院していきました。別の病気で入院してきた方もいるのですが、明後日あさって退院とおっしゃっていました。


 一方で私は、毎日150ml前後のれがあるのですが、少なくなる兆候ちょうこうも見られません。

 その間はずっとお腹から生えたままなので、傷口の部分を保護するテープもったまま。それがかゆくてしょうがないんです……。


 しかもさすが医療用テープ、粘着力が半端ない。私はお腹の柔らかい皮膚ひふの所だったので、がす時は上から液体を塗ってはがしてくれました! 

「今まで痛い思いをたくさんさせちゃったからねー」

 ということでした。ありがたいです!


 さて。

 男の人などはおんなじところでも毛が生えていたりしますよね? 

 そんな時はがすの大変じゃないですかー? と聞いたことがありました。

「あー。毛とか抜けるのはしょうがないよねー。もうえいっ! て思いきってがすのよー」

「コントみたいですねー」

 笑顔で言いきった看護婦さんも、白衣の天使の一人です。



 こうして優しくしていただいた一週間でしたが、病状は全く変わりませんでした。

 たんのうから切り離した胆管たんかんは、いずれ傷口が癒着ゆちゃくしてれも止まってくれるらしいのですが、わたしの場合はじっと見ていれば袋に流れるのがわかるくらい絶好調で大放出中。

 最も早いのは、また手術できっちり止めるのが確実なのですが、それだと私の体に負担がかかる。

 だからと言ってそのまま放っておくのもなんだしなあ。

 と言うことで、次の治療法がためされます。



 胃カメラをのんで、その先の十二指腸じゅうにしちょうつながっている胆管たんかんの出口からその胆管たんかんに新たなチューブ(ステント)を突っ込むのです。そのチューブ(ステント)に胆汁たんじゅうを誘導することで、れを無くすということです。


 ただ、これには少ない確率で膵炎すいえんにかかる副作用があると言います。造影剤ぞうえいざいを使うのですが、使う場所が肝臓かんぞう膵臓すいぞうへと続く分かれ道付近だからです。どうしても膵臓すいぞうの方に造影剤が入ってしまうので、運が悪いと炎症をおこしてしまうようなのです。


「まあ、一応こういう事がありますが、ほとんどおきない副作用ですよー」

「へぇー、そうなんですねーあははー」

 先生が軽い口調でそう言っていた位なので、私はすっかり安心していました。

 万が一にも、ないだろうなぁーと。

 しかし。

 どうやら宝くじに当たったくらいのせまき門を通れたようです。


 今思えばサマージャンボ買えばよかったかなぁとしみじみ思い返しています。



 この治療は、当日の朝からごはん抜きでいどみます。

 お腹辺りにだけレントゲンをあてて、それを見ながら胃カメラを使って治療するんですが、その胃カメラ、めちゃくちゃ太かった……。

 先生の用意が出来ると、点滴で10分位意識がぼやーとなる薬を入れてもらいました。

 ですが胆管たんかんにチューブ(ステント)が入ったとたんに、痛みで覚醒。風船をこすったような感覚が体の中に広がると、それに追いかけるように痛みも広がりました。

 そのあとの胃カメラが口から出る感覚がとても気持ち悪かったのを覚えています。


 朦朧もうろうとしているなか、ベッドに横になりながら病室に戻ってきました。が、私は気分が悪くなる一方で、また一人、せまりくる吐き気にうなっていました。

 一週間前に入院された方が心配して看護婦さんを呼んで下さいましたが、水すら飲めない状態が続きました。その体調不良は終日しゅうじつ続くことになりました。



 そして次の日。


 私は体の不調で目をさまします。

 何だか体が痛くてだるい。背中が木槌きずちでぶっ叩かれているようだ。

 すると、慌ただしく主治医さんと看護婦さんがやって来ました。


「おるかさん。膵炎すいえんになっちゃったから、先にそっちの治療をします!」

「……はひ?」


 痛みで目が回るような意識のなか、私の腕に新たな点滴が刺されておニューの薬が使われました。これで両手に花ならぬ、両腕に点滴。

 どうやら私の膵臓すいぞうの、上がっちゃいけない数値が爆上がりだったそうです。


 膵炎すいえんは、命に関わる病気です。

 ひどくなると自分の膵臓すいぞうを溶かしてしまうとか。


「これから一週間は断食ね。でも栄養は点滴でとれるから大丈夫だよー」

「やったー……痩せられるぞー……」


 こうして私の断食ライフも始まりました。


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