2泊3日の手術のはずが42泊43日になってしまった私のお話

織香

病気発見から、仮退院? まで

胆のう炎って……なに?

「胆のう炎ですね」


「はあ」


 様々な検査の後に、再び診察室に通された私の第一声は、なんとも間抜けな声でした。


「ほらほら、以前健康診断で使ったMRIの映像なんだけど、くらべるとこーんなにれているんですよ」


 そんなことを言う先生の前で、私はきょとんとその二枚の映像を見比べていました。

 先生の前にあるパソコンに映された、黒い背景にぼやっとした白いなにかが映った写真。内臓を撮った写真ですね。

 その映像の一部分を先生が持っていたペンでグルグルと指し示している所には、決定的に違う場所がありました。

 大きな二等辺三角形(肝臓)の下の人参(の形をした胆のう)が、パンパンにふくらんでいる。どうやらここが胆のうらしいです。




 この前日の夜中に、唐突な背中の痛みと吐き気で目が覚めた私です。

 2時間ほどのたうち回ったあと結局眠気に負けて寝てしまったのですが、心配した旦那が病院へと連れてきてくれました。

 最初は急性胃炎きゅうせいいえんかと思ったので、お薬のんで大人しくしてようと、のんきに思っていましたが。

 私の体は予想以上にんでいたみたい。


「ぱっつんぱっつんですね。肝臓かんぞうされて窮屈きゅうくつそう」

「でしょう? ただねえ、入り口が詰まった原因が映ってないので、胆のう取りましょうか。はい入院ね」

「え? 今からですか!?」


 本当はもっと詳しい説明があったのですが、こんな感じで唐突に入院が決まりました。



 胆のう炎って、発見が早ければ早いほど手術がしやすいのだそうです。時間が経つと胆のうが固くなってしまうんだとか。

 しかも大抵たいていの場合、胆石たんせきが入り口に詰まってれるんだけど、私にはその石が映ってなかった。なので原因不明なんですって。


 原因不明の場合はお薬じゃなおりづらいらしく、手術で取ってしまうのが一番だとか。

 その為に、もうリスクが軽いうちに取ってしまおう、とのことで手術の予定が組まれていきました。




「あのー、急なので一度うちに帰って用意してきていいですか?」

「いやー、あと2時間後には手術なんで、無理ー」


 なので手術前にどなたか荷物を持ってきてもらってねーと、私の腕に点滴を射している看護婦さんに笑顔でそう言われます。

 私は慌てて旦那に電話をかけました。

 だって入院なんて出産以来なんですもの、用意なんて全くしてない。


「入院です。手術です。あれとこれと、とりあえず持ってきて下さいな」

「ほう!?」


 裏返った声を出して驚く旦那、子供達の助けを経て荷物をまとめて持ってきてくれました。いやぁ、春休みでよかったね。

 どうやら手術には立会が必要らしく、旦那も説明を一緒に聞くんですけど、やっぱり素人なのでちんぷんかんぷん。それでも胆のうを取ってしまったほうが良いという内容はわかりました。お医者さんってすごいですね!


 胆のうって『無くてもいい臓器』なんだそうです。だから取っても平気なんですって。

 胆のう摘出手術って、結構あるみたいなんです。


 そう言われた私の手術は、いたって普通のやり方だったそうです。

 全身麻酔だけど、お腹を開かない腹腔鏡ふくくうきょうで出来る手術。なので回復も早いため、2泊3日で退院出来ると説明がありました。


「まぁ、おるかさん若いし、体力ありそうだからほぼ2泊3日で帰れますよー」


 って、笑って言われたんですよ。

 当時の私は旦那の仕事を手伝っていて、重い荷物も一人で持てるほど元気でした。だから私も、その言葉を全然疑っていなかったんですよね。


 実際には42泊43日だったけど……。




 そして初めての全身麻酔!

 その経験は、とても楽しかったです!

 麻酔が体に入ると息を吸おうとしても吸えなくて、あれー? と思っていたら口になんかが入ってきたのを最後に記憶がありません。残念、もう少し不思議体験を味わっていたかったのに。


 麻酔から目覚めた瞬間に、先生に「宝くじで100億当たった夢を見ました」って言ってたって後から教えてもらいました。これも覚えていなかった。



 14時頃に手術して、はっきりと目が覚めたのは次の日の朝でした。ぐっすりと眠っていたようで起きた時はすごくスッキリしてました。

 私、よっぽど疲れていたのかしら? 

 でも3日間だけど子供から離れてまったりできるなぁ、ラッキーなんて思っていた私は、このあとなにしようかなぁとワクワクしながら普通食の朝ごはんを美味しく食べました。



 そう。楽しいのは、ここまでだったのです……。



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