異世界救済、正直大変すぎる!!〜付喪神は多忙です〜
汐風 波沙
プロローグ
(まえがき)
こちらの作品は、本編に入るまでがかなり長いですが、大事になってくるので、軽く読んで、その後本編に入って頂けると、読みやすいと思います。
ガッガッガッ……、ジュー
身体が、熱い。なんなんだ、この熱は!!
カーンっ!!カーンっ!!
痛っ!!なんだよ、次は叩かれるのかよ〜!!
そんな事が、無限に続く様な気がしていた。
だが、俺が刃物に形状が変わると、
「よしっ、お前の名は、……」
風が気持ちいい。そして、なにか柔らかい感覚がする。
「……あれ、ここ何処だ?」
「ここは神界、天の門前広場ですよ、付喪神さんっ!!」
「は?」
「あれ?いまいちピンと来てないですか?まあ、そうですよね、千年使われて、そのまま神に昇格したからといっても、いきなり人の姿になって、しかも、いきなり私みたいな名の知られてない女神に言われたところで、どうせ嘘だと感じるのが普通ですよね……」
「ああ、確かに理解が追い付いていないのは確かだが……、あ、あの、ちょっといいか?」
「はいっ‼何でも聞いてくださいっ‼あ、でも、私のスリーサイズはだめですよ、自信ないので」
「すみません、それに関しては、まったく興味ありません。」
「そうですか……」
なんだこの女神、表情がめちゃくちゃころころ変わってて、なんか、可愛いな。でも、今一番聞かないといけないことは……
「付喪神ってなんだ?」
「まあ、その質問が来ますよね。知っていましたが、いいでしょう。」
「おいちょっと待て、知っていたってどういうことだ?」
「私の権能ですよ。会話している相手の数分先を見ることができます、まあ、この世界の数分なので、現世でいうところの数年先とかですね。まあ、その辺の話も含め、付喪神について説明しますよ」
「お、おお……、頼んだ」
権能っていったいなんだ?ていうより、なんで俺は、神になってるんだ?
「ではまず、付喪神とは何なのかについてからですね。付喪神とは、武器に宿った魂がその生涯を終わる際に、とてもまれに神に転生することがあり、それで神になった存在を付喪神といいます。ちなみに、魂に転生の意志はなく、拒否権もありません」
「じゃあ、俺は無意識のうちに転生した魂ってことか……」
「そうなりますね……、で、でもっ、気になさらないでください、神に転生することなんて、そうそうないことなんですよ‼もっと喜びましょうよ」
「いや、正直ありがたいとは思っている。あれ以上罪人や善人を切るのは嫌で、自らの意志を折った刀だ。もう二度と刀に転生したくない」
「なるほど、では、あなたは、何年間くらい使われていたんですか?」
「記憶は定かではないが、確か、1000年間、いろいろな人の手に渡って、最終的には、自分の心が折れて、使い手を裏切ったのが、二百年くらい前のことだから、たぶん、1800年くらいかな?」
「なるほど、1800年ですか……せ、せ、1800年⁉」
「ああ、そんなもんじゃねぇの?」
「いやいや、私は、まだ神になって向こうの時間で、600年ですよっ‼」
「へー」
「興味なさそうですね」
「ああ、別に、気にはならないな」
「神に対して失礼では?」
「俺も神だぞ?」
「それもそうですね」
「だろ?」
「じゃあ、あとは、あなたの部屋に案内したら、私は仕事に戻ります」
「ああ、よろしく頼む」
俺は起き上がり、気が付いた。
『なんで俺膝枕されてたんやろう……』
「では、ここがあなたの部屋になります。今日は何もないので、ゆっくりしていていいですよ」
「ここ、家というよりも、工房だな」
俺は、部屋と言われて指さされた場所を見てそう答えた。
「そうですね、建物の半分は居住区域で、もう半分は、工房のようです」
「でも、俺、刀、打てないぞ……」
「えっ、そうなんですか⁉」
「俺は刀であって、刀鍛冶ではない」
「でも、作られた時の記憶はありますよね?」
「ああ、ぼんやりとだけど……」
「なら、大丈夫ですよ、少しずつ思い出していけば、きっと作れるようなりますよ」
「そ、そうか……」
「では、私はこの辺で失礼しますね」
と言いながら、女神は自分の仕事に戻っていった。
「はあ、仕方ない。俺は俺で、何かしようか。」
俺は、工房の裏手に回った。
裏手には、結構広い庭があった。
「まずは、使い手たちの技を思い出していこうじゃないか。」
俺は、今までに何人もの使い手がいた。
「でも、刀どうするか……、でも、こういうのって、想像するだけで……」
俺は目を閉じ、刀が作られる工程を思い出した。
やっぱり、思い出せない。でも、体は覚えているようだ……
「大事なのは、美しさじゃない。どんなことがあっても、折れない曲がらない、芯の強い刀こそが、最も美しい刀になるのだから」
ああ、思い出した。俺を作ったやつが言ってたな。
「ここに誓おう、俺はもう二度と折れない曲がらない、芯が強い神になるっ‼」
すると、俺の腰に一本の刀が現れた。
「まさか、これは、俺なのか⁉」
そうこれは、俺の魂が入っていた元々の刀だった。
「ほお、日本刀、しかも古刀を呼び出したのか」
「えっ⁉」
「おや、これはすまない、戸が開いていたから、つい入ってきてしまった」
「そうか、まあ問題ない。」
「少し、見せてはくれぬか?」
「ああ、いいぜ」
俺は、よく分からんやつに刀を渡した。
「おお、これは素晴らしい。そして何よりも美しい。ありがとう、返すね。」
「あ、ああ」
俺は刀を受け取った。
「それにしても、素晴らしい神器だな。東洋の刀は初めて見たよ。職人の命が、宿っていて、素晴らしい。」
「そ、そうか。それは良かった。で、あんたは?」
「私の名は、ヘファイストスという。ところで、君の名を聞いていなかったな」
「俺の名か……、今考えると、無いな」
「それは一体どういうことかな?」
「俺、付喪神なんですよ」
「ああ、君が例の付喪神か……」
「例の?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「そうか……、君は、その刀に宿っていた魂なのだろ?なら、その刀の刀身の輝きは、朝日のように美しいから、
「暁……、とてもいい名だ。ありがとう、ヘファイストスさん、俺の名前は、
その瞬間、俺の体の中に熱い何かが宿ったような気がした。
「素晴らしい真名だな。では暁、そろそろ行こうか」
「行くってどこへ?」
「決まってるだろ?主神に挨拶だよ」
「主神?」
「オーディン様は、とても厳格な方だ、ボケると貫かれるぞ」
「わ、わかった。善処するよ」
こうして俺は、主神オーディンと会うことになり、これからたくさんの世界を旅することになるのは、この時はまだ、知る由もなかった。
________________________
(あとがき)
皆さんこんにちは、汐風波沙です。
今回は、自分の作品としては珍しく異世界系を書いてみました。
ん?異世界系じゃないと言いたいのですか?
まあ、そうですよね……
ちゃんと1話から本気出していきますので、良かったら、作品のフォロー、応援、感想、レビューを頂けると、今後のモチベーションに繋がるので、良かったら、よろしくお願いします。
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