春夏秋冬
六宗庵
春/桜の木の満開の下
桜の木の満開の下。
僕はそこに視えるものから目を背けようとして、注視する。
そこには視たくなかったものと、男が一人。
一人が手を翳せば、視たくなかったものは花弁とは反対に上へと
綺麗だ、と思った。
思ったのは満開の桜でも、花弁でも、溶けてゆく何かでもない。
その、桜の下で花弁を遊ばせ何かを昇天せしめたその人に目を奪われていた。
特別、変わった顔でもない。整ってはいたが奪われたのはそこではなかった。
眼。
あれは、遠い記憶に、見た。
死神の。
はたと、その眼が、此方を見遣る。
「……君は、」
掻き切られた首の傷が、ずきりと疼いた。
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