ドラゴン製の装備

「ようやく、お前さんとの約束が果たせるぜ、ランバート」


 コナツによって、ドラゴンの部品でできた装備が完成した。龍の背骨に入ったら、装備を作ってやると約束していたのだ。


 部分的には、俺たちの装備にはドラゴンの素材が使われていた。ここまで純粋にドラゴンのパーツを使ったものは、初めてである。


 本当は、今すぐにでもクリムを探しに行きたい。


 だが、【セグメント・ゼロ】での戦いを見る限り、明らかに戦力不足だった。


 他のハンターたちは、危険を顧みず戦いに赴いている。ドラゴンの素材も、たいして使っていない。レベルが低く、扱えないからだ。


 フェリシアの銃は、外装にドラゴンのウロコを使って補強してあった。


「持っていても、疲れないわね? ドラゴン素材って、頑丈な代わりに膨大な魔力を要求するって聞いたけど?」


 何度も、フェリシアは銃を構えている。調節しているというより、酔いしれている様子だった。


「半分生きている素材だからな。フィーンド・ジュエルのおかげで、その消費がなくなっているのがデカいんだ」


 ジュエルがなければ、すぐにガス欠になっていたらしい。


 トウコの棍棒にも、牙や爪、角が使われていた。シュッシュとシャドーをしている段階で、トウコが早く装備の性能を試したくてウズウズしているのがわかる。


「過去は金属製のボディで妥協しておりましたが、ここまで強くなるのですなあ」


 シーデーに至っては、全身をドラゴンの骨で固めた。扱うドローンさえ、ドラゴン製である。


 機械の手には指マシンガンの他に、手のひらにフィーンド・ジュエルを埋め込んだ。これで、手から魔法を放つことができる。金属ではなくドラゴンの素材を使うことで、そういった戦術が可能になった。


「手からビームが撃てるのは、ロマンですな」


 さっそくシーデーが、訓練用の壁に冷凍光線を浴びせる。顔がルビーのジュエルなので、表情はわからない。だが、ピコピコ跳ねるウサギ耳型アンテナと、弾んだ声を聞いている限りでは満足げだ。


「サピィ、これはドラゴンのウロコを使ったローブです。少しくらいの攻撃なら、軽く弾き飛ばすのです」


 装備製作には、ノームのダフネちゃんも協力してくれている。術士のサピィや格闘家のトウコの衣装関連は、ダフネちゃんが担当した。


「そういえば、ドラゴンの装備って、ペールディネで見つけたローブ以来だな」


 たしかあれも、素材はドラゴンのパーツだったか。


「あのローブはオミナスでしたから、ちゃんとした装備は初めてですね」


 サピィが、ドラゴンで作った装備に袖を通す。


「武器も、ドラゴンの目玉を加工した特注品なのです」


 ドラゴンの素材は、大半がルダニムや他の街に流れた。だが俺たちが功労者だからと、質のいい素材はコナツの工房に優先的に流してもらえたのである。


「あの女のことだから、『共有財産だわよっ!』とか言ってくると思ったぞ」


 シャドーをしながら、コナツがゾーイのマネをした。まったく似ていない。


「んなこと、させるかよ。一番働いているのは、ランバートなんだ。しかもそのせいで、一番クリム探しで足止めをくらっている。だが、もうそれも終わりだ」


 俺はコナツから、【イチモンジ】を受け取る。見た目こそ変わっていない。普通の白鞘の刀だ。


「刀を持ち上げてみてくれ、ランバート。ずいぶんと軽くなったはずだ」


 イチモンジは、中に【黒曜顎コクヨウガク】があることを忘れるくらい、軽くできていた。


「強度は三〇倍で、黒曜顎の制御はそれ以上になっている。とんでもねえぜ。ドラゴンの素材はよぉ」


 コナツの手が、震えている。それだけ、手応えのある仕事だったのだろう。


「ランバート、必ず、クリムを無事に連れて帰ってきてくれ。俺が力を入れているのは、それだけのためだ」


「ありがとう、コナツ。行ってくる」


「気をつけてな、ランバート。お前だって、オレには大切なダチなんだから」


「ランペイジが、そう簡単に死ぬかよ。お前の装備だってあるんだ。平気さ」


「だよな!」


 クリムの捜索は、いよいよ本格化する。


 これからは、しばらく帰れなくなるだろう。

 



――クリムサイド――




 クリム・エアハートは、セグメント・ゼロの裏道を抜けてキャンプをしていた。


「すまない、ジェンマ。キミまで巻き込んでしまった」


 銃の調節をしながら、クリムは向かいに座るジェンマに声をかける。


「仕方がないわ。予想外だったから。まさかセイクリッドの女王……あのゾーイとかいうヤツの母親が、オミナスに汚染されていたなんて」

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