オミナスとの死闘

 俺が避難所のそばに駆けつけると、サピィとジェンマが睨み合っていた。


 だが、サピィが戦闘不能に陥っている。


秘宝殺しレア・ブレイク!」


 無我夢中で、俺はジェンマ・ダミアーニを斬り伏せた。ディメンショ

ン・セイバーで。その勢いは、ジェンマの前にいたドラゴンローブさえ切り捨てる。


 ローブに組み込まれていたドラゴンの頭が、みるみる白骨化していく。ローブはただの布切れとなり、アーティファクトという神がかったオーラはもはや見る影もない。


「ぐおおおおおお! おのれ!」


 身体を翻し、ジェンマは振り返る。


「くそ!」


 背中をわずかにかすめただけだったようだ。それでも、ローブはレアアイテムだったのだろう。純白のローブが、みるみる煤けてくる。


『ちいいいい! デーニッツは、しくじったかぁ!』


 苦しそうにうめきながら、杖で身体を支えていた。だが、声がまるで違う。


『貴様のようなヤツに、我々オミナスの計画は邪魔させぬ!』


 杖から、声がした。杖がしゃべっているのか?


「あれがオミナス。意思のある呪いのアイテムです」


 サピィの説明は、にわかには信じられなかった。しかし、目の前のことは事実だ。


『レア・ブレイクの使い手を殺せば、勝機はあると思ったが。こちらも本気で挑まねばなるまい! 見るがいい、我が真の姿を!』


 杖が、ボロボロになったローブごと、ジェンマを捨てる。杖自体から、金属質の腕が生えてきた。


「あれは?」

「オミナスをかき集めて、手足にしているのです」


 ジェンマは放置のままだ。


「宿主は不要なのか?」

『ここまで魔力を吸い取ってしまえば、もはや肉体など不要!』


 杖はいうが、サピィは首を振る。


「何を強がりを。さっきの攻撃で、ジェンマとの関係性が途切れたからでしょう!」

『黙れ、落涙公! 貴様さえ現れなければ、もっとうまくことが運べたものを!』


 あらゆる無機物を取り込み、杖が女の身体となった。体を覆うのは、すべて武器である。


『不完全だが、まあよい。喰らえ!』


 武器の群れが竜巻となって、サピィ襲いかかった。見たこともない技だ。


 破壊光線を放ち、サピィはオミナスの竜巻を溶かす。


「お返しだ。ディメンション・セイバーッ!」


 相手の核であろう杖を狙って、光刃を放った。


 しかし、すべて防がれてしまう。


「くう、相手に届かない!」


 とはいえ、相手も無傷ではない。ボロボロと、オミナスが砕け散る。


『む、さすがレア・ブレイクよ。だが』


 杖の女は、死んだペールディネ兵士たちの武器さえ奪った。力を与え、オミナスへと変換していく。


「手数を増やすか」

『武器がある限り、我は不死身!』


 天に手をかざし、杖の女は武器の雨を降らせた。


 セイバーや、破壊光線ですべて撃ち落とす。だが、次々と俺たちに向けて無数の武器が降り注ぐ。


「キリがない!」

「なんの、破壊光線!」


 サピィ渾身の魔法も、オミナスと化した盾によって弾かれた。


 無限の攻撃に、絶対防御。もはや、相手にスキはない。


 武器の雨の下に、ジェンマの姿があった。


「いかん!」


 俺はサピィと連携し、ジェンマを襲う武器を破壊する。まだ生きている可能性がある以上、サピィの友人は死なせない。


『ムダなあがきを! トドメだ死ね!』


 三人に、さらなる怒涛の攻撃が。


「させるかおらあ!」


 ディメンション・セイバーを最大出力まで上げる。


 それでも、攻撃は収まらない。


「もう一ぱ……」


 次の瞬間、俺たちに向けられた攻撃が、一瞬止んだ。

 正確には、襲ってきた武器がすべて粉々になっている。


「ジェンマ?」


 満身創痍のはずのジェンマが、オミナスの一つを奪ったのだ。ロングソードによる居合斬りで、襲いかかる武器の群れを一刀の元に斬り伏せた。


 しかし、それが限界だったらしい。

 目をつむったまま、ジェンマが首をもたげる。

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