ジュエルの特性チェック

「よほど、信頼していらっしゃるのですね?」

「あいつの作った装備に、何度助けられたか」


 ジュエルを活用できるヤツなんて、コナツをおいて他にいない。 


 シーデーはメンテナンスをして、サピィは食後の入浴へ。


 俺は、ジュエルのエンチャントが残っている。


 フィーンド・ジュエルのグレードは、現在4種類確認されていた。


 二ミリ以下の【種状シード】、二ミリ以上五ミリ以下のものを【破片チップ】という。

 一センチ以下は【三角デルタ】と呼ばれ、三センチ以下でようやく【標準スクエア】と言われているそうな。


 以前、強化されたミノタウロスが落としたのは、【スクエア】だ。


「すごい量だな」


 大きさは【チップ】が数枚、標準のミノタウロスは【デルタ】を落とした。

 あとはすべて、【シード】のグレードである。

 数え切れないし、数えたくもない。



「これ全部エンチャントか。面倒だ」


 いっそ、全部を色で仕分けた。カラーごとに分けて瓶に詰める。


「あ、そうだ。エンチャントしていない装備と区別しないと!」


 すっかり、エンチャントの力と、ジュエルの力を混同していた。これはうっかりである。


 エンチャント前後で、瓶を分ける。


「これでよし。いくぞ、【エンチャント】ッ!」


 ルビージュエルの入った瓶に、エンチャントを施した。


 瓶詰めのルビーに、炎の力が宿る。


「よし、見分けはつくな!」


 エンチャントすると、宝石の中に炎が灯っているのが見えた。


「他も試そう」


 サファイアだと氷の結晶が、エメラルドだと小さな竜巻が、トパーズだと稲光が。アメジストだと、色自体が光っている。


「これは発見だな!」


 だが、疲れがドッと出てしまった。


「いかん、危うく寝落ちするところだった。まだまだ」


 その後、数度エンチャントを続ける。



 翌朝、俺は眠い目をこすりながら、コナツの元へ。


「ほら。どれもエンチャント済みだ」


 エンチャントを済ませたジュエルを、コナツへ渡す。


 どの宝石も、グレードが最も低い【シード】タイプだ。

 大きさは、植物の種ほどしかない。


 ジュエルのグレードは、種状の【シード】、破片程度の【チップ】、きれいな三角形をした【デルタ】、四角形の【スクエア】の四種類が確認されている。


「ありがとよ、ランバート。すげえ。こんな小さいのに、帯びている魔力が溢れ出てきそうだ」


 エンチャントを使ってみてわかったことがあった。

 宝石にエンチャントを流し込むと、ほぼ永続的にエンチャントがかかったままになる。

 エンチャントレベルを三〇以上挙げた恩恵だと、スキル表に書いてあった。


「初心者向けだからな。このサイズにした。不満なら、もっと大きいジュエルを用意する」


 ジュエルの大きさには、扱える適正レベルがある。

 よって、俺は小さめのジュエルを提供したのだ。

 試験も必要だし、なにより素人が扱えなければ意味がない。


「とんでもねえ。十分だ。弟子に作らせるには、このくらい小さいヤツから試した方がいいだろう」


 コナツにも弟子がいる。

 アイテムにジュエルを仕込む作業は、弟子にさせるらしい。

 コナツは、俺たちパーティ用の装備作りに専念するそうだ。


 今のところ、ダンジョンに変わった様子はない。

 俺は初心者向けダンジョン往復することにした。

 ギルドの依頼と、ジュエル集めのために。


 もっと上のダンジョンを目指してもいい。しかし、今は【ランペイジ商会】の名前を覚えて必要がある。そのために、ジュエル付き装備を増やすことにしたのだ。


 何より、ジュエルの特性を知る必要があった。


「ひとまず、コナツが作った試供品を試すか」


 まずは、赤い石をはめた炎のエンチャントを施す。


「ルビーのロッド。おらあ!」


 適当に、ウルフを殴った。


 炎の加護を受けたロッドに胴を殴られたウルフが、黒焦げになる。


 胸部プロテクターに同じジュエルをはめてみた結果、体力の最大値が上昇した。


 ミノタウロスのドロップ品であるバルディッシュで、片っ端からゾンビを切り刻む。バルディッシュには、氷の魔法をエンチャントしている。


「おらららああ!」


 列を作っているゾンビを、氷のエンチャントでまとめて貫いた。突きにはもってこいかも知れない。俺が首にかけているネックレスにも、サファイアが付けている。これにより、魔力の最大値が高くなった。


「お嬢様、背後にゴブリンシャーマンです」

「承知」


 トパーズを付けた盾が、ゴブリンシャーマンの魔法を少々跳ね返す。


「我ながら、とんでもないパワーですね」


 ゴブリンの群れを火球で焼きながら、サピィがそう切り出した。


「エンチャントを施すだけで、ここまでとは」


 俺も、魔物をバルディッシュで撃破しながら返す。


「しかし、他のジュエルは、攻撃に確実性を感じないな」


 残ったアメジスト、パールに関しては、特性がわからない。


「パールは武器として使うと、相手に状態異常を起こします。このように」


 試しにサピィが、パールをはめた金属棍棒で大亀を殴った。


 殴られた亀が、仲間と同士討ちを始める。


「防具として使用すると、毒などの耐性が付きますよ」

「アメジストは?」


 俺が聞くと、サピィが棍棒を見せる。


 棍棒には、パールと同じくアメジストが付けられていた。


「装備の攻撃力が上がるみたいですね。もし、アメジストを付けないままだと、このとおり」


 今度は無印の棍棒で、サピィは亀の甲羅を再び殴る。棍棒が、根本から折れた。


「色々と特性がわかって、面白いな!」

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