レアイテムの仕組み

 魔物たちが地上に現れて数世紀、都市機能はマヒし、人類は大半が壊滅している。


 これら魔物を撃退して人間的な生活を取り戻すのが、ハンター結成の主目的だった。


 しかし、電力などの機能などはほぼ死に絶えては、都市復活も見込めない。

 さらにモンスターからレアアイテムなどが手に入るとわかると、ハンターは狩りだけに専念し始めた。

 ギルドがあっても、統率が取れないままでいる。


 ハンターたちはわざと、魔物との戦いを戦いを長引かせていた。


 王国などの一部地域しか、都市機能を果たしていない。


 クリムのように、街の再生を目的としているハンターは稀なのだ。


 今日は流石に、オーガ亜種などは現れていない。

 小さなスライム相手に奮闘する冒険者のチビたちを横目に、ダンジョンを目指す。


 再び、サピィがフードをかぶる。

 角を出すと、魔力が安定するらしい。角を变化させるのは、魔力を抑え込む役割もある。


「むうううう」


 スライムと戦うちびっこたちを、サピィは複雑な眼差しで眺めていた。


「ランバート、私は、どっちを応援すればいいのでしょうか?」

「スキな方でいいって」


 チビ冒険者たちが、スライム相手に勝利した。

 悪いスライムが、小銭を落とす。


「まあ、健闘した方ですわね」


 サピィは、相手スライムをそう評価した。


「やはり、同族が殺されたりすると気になるか?」


「ええ、まあ」と、サピィは返す。


「とはいえ、それを言ってしまうと、人間も殺し合ったりするので」


 スライムと言っても、個体によって故郷も環境も違う。従っている戒律さえ個体によっては異なる。

 そこは、人間と同じだ。

 同じ種族だからといって、精神や感覚まで共有しているわけではないらしい。

 魔物の頂点であるロードといえども。


「ランバートだって、盗賊が出てきたらやっつけるでしょう?」

「まあな。こんな風に」


 俺たちを、ゴロツキ風の男どもが取り囲む。


 ここで俺たちが無視して逃げても、ターゲットがチビッ子どもに移るだけ。

 ここで仕留めないと。

 つっても、新武器は威力が高すぎて試せない。盗賊が粉々になってしまう。


「疫病神相手にカツアゲか。飢えてるな」

「テメエに用はねえ。女を置いていけば見逃してやるぜグヘヘ」


 盗賊の頭が、舌なめずりをする。


「私のお客のようなので、参ります」


 杖をシーデーに渡して、サピィが盗賊の頭に歩み寄った。まさか、こんなヤツの言いなりになんてなるまい。


「へへ、そうこなくっちゃあべし!?」


 サピィが腰を落とし、盗賊頭のみぞおちに一発叩き込む。目にも留まらぬ速さで、腕をスライム状にして土手っ腹に打撃を見舞った。


 盗賊頭が、何もできずに吹っ飛ぶ。


 恐ろしく早いボディブローだった。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。

 体術だけでも、サピィは強いらしい。そりゃあ、魔族だからな。


「金的でも良かったのですが、タッチしたくなかったので」

「ひいいい!」


 気絶した頭を抱えて、盗賊団が一目散に逃げ出した。


「朝の運動にもなりませんでした」

「急ごうか。ムダな時間を過ごした」


 さっきの出来事などなかったかのように、俺たちは歩き出す。


「魔族にひとつ聞いてみたかったんだが、なんでモンスターは、アイテムを落とすんだ?」

「アイテムだけではありません。お金なども落としますね」


 ほとんどの魔物は、倒すとアイテムをドロップする。強いモンスターほど、魔力を帯びたアイテムを持っている可能性が高い。その魔力に影響されて、凶暴化したり知識を持ったりする。


 奴らがどうしてこういった強い装備品を手に入れたのか。その経緯はまったく不明だ。拾ってきたのか、魔王などの上位存在から手渡されたのか。未だに誰にもわからない。


「モンスターは、アイテムを食べて強くなるのです」


 アイテムの持つパワーを、体内に吸収しているのだとか。


「強いモンスターの割に、アイテムがしょっぱい場合は?」


 こんなケースは、割と多い。苦労して倒したのに、経験値以外は割と実入りが少ないことがあった。

 

 そのせいで、俺は追い出されたのだが。


「モンスターの方が魔力を取り込みすぎたのでしょう。逆にいいアイテムだと、強いモンスターに食べられても力を維持します」


 また、アイテムのほうが魔物の魔力を吸うケースもあるという。


「それが、俗に言う【レア】なのでしょうね。私自身、アイテムに力を吸われた経験はありませんが」


 アイテムと魔物に、そんな相互関係があったとは。


 話しているうちに、洞窟に到着した。

 何の変哲もない洞窟だ。

 が、各所に人の手の入った痕跡がある。

 調査団によると、古代文明の遺跡なのではという説が高い。


「そうですわ、あなたにはこちらを」


 サピィから、二つのブレスレットを受け取った。どちらも金でできており、穴が四つ開いている。


「フィーンド・ジュエルを吸収するブレスレットです。敵を倒すと、これがジュエルを吸い込んでくれます」


 貯めたジュエルは、このブレス内に回収できるしい。


「また、フィーンド・ジュエルは武器だけにはめ込むものではありません。防具などにも装着できます」


 他にも緑は素早さが、赤は体力が上がるらしい。


「ありがとう。大切に使わせてもらう」

「ごめんなさい。結構な数の敵を倒したんですが、力が弱くてそのくらいしか在庫が」


 ブレスレットには、大量の宝石が。


「いやあ、大した数だよ。使ってもいいか?」

「お気になさらず」


 実験的に使いつつ、色んなことを試していくか。

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