第44夜 裁いてポイ! (約1550字)

変な夢を見た。


  私は、再び、あのゲーマーのもとを訪れていた。

 (『第5夜 リアル3Dシューター』、『第8夜 THE EARTH』参照。) 

 

  私は、彼の隣に座って、PC画面をのぞいている。


 ・・・・


  えっ? 『THE EARTH』は、どうしたって・・・?

  ああ、もう、あきたんだ・・・。

  それにな、あれをやるようになってから、変な夢ばっか見るんだよ。

  たとえば、地球に超巨大隕石が衝突する夢とか・・・もう・・・うんざりだぜ。

  別に、それが現実になるってわけじゃないけどよ・・・。

  なんか、気が乗らなくてな・・・。今は、こっちをメインにやってる。

  ブラウザゲームさ!


 (彼は、そう言って、PC画面に表示されたブラウザをゆびさす。

  ブラウザには、【裁いてポイ!】というページが開いている。)


  これこれ・・・【裁いてポイ!】。

  べつに、ゲーム自体は、スゴイってわけじゃない。

  ついつい、暇な時間にやっちゃうんだよな。中毒性は、激ヤバかもな・・・。

  

  えっ? どんなゲームかって・・・?。

  犯罪者をね・・・裁くんだよ! 犯罪者を・・・とにかく、裁く!

  いいか? ゲームを始めるぜ。口で説明するより、見てもらった方が早い。


 (彼は、そう言うと、【裁いてポイ!】を開始した。

  画面には、犯罪者のリストが表示されている。

  そのリストは、顔写真、管理番号、犯した犯罪内容で構成されている。

  私は、犯罪者の顔写真が、すべて外国人であることに気づいた。)


  まず、裁きたい犯罪者を選ぶんだ。顔と犯罪内容で判断する。

  コイツがいいか・・・管理番号『B10987』。


  えっ? 名前がない・・・?

  ああ、こいつら、犯罪者だから、番号で管理されてるんだ。やだねぇ・・・。


  えっと、こいつの犯した罪は・・・。

  ぷっ、笑っちまうな。万引きだってよ。それも、ビール一缶だとよ。

  おかわいそうに・・・。


  さてと、の時間だぜッ!


 (彼は、そう言うと、この犯罪者の項目の【裁く】のボタンを押した。

  画面に【無罪】と【死刑】の項目が表示された。)


  えっ? なんで、【無罪】と【死刑】しかないかって?

  そんなの知らねえよ。俺が作ったわけじゃない。

  

  えっ? どっちにするかって・・・?

  そんなの決まってるじゃん!

  

  ・・・【死刑】だ!

  

  えっ? ビール一缶の万引きで、【死刑】は、ひどすぎないかって・・・?

  クックックッ・・・。

  あいかわらず、馬鹿なこと言うなあ・・・。

  これは、ゲーム・・・たかが、ゲームだぜ!

  この犯罪者も架空・・・。

  だったら、別に【死刑】でもいいだろッ!

  アハハハハハッ!


 ・・・・


  ある日、C国のある収容所にて、雑居房の前に三人の男が立ち止まった。

  男のうち、一人は、右手にファイルを持っている。

  他の二人は、ファイルの代わりにライフル銃を手にしていた。

 

  ファイルを手にした男が、雑居房の中に向かって、声をかけた。

 「『B10987』、前へッ!」


  すると、雑居房の奥から、一人の男が、彼の前に出てきた。

  彼は、その男に向かって、顔色一つ変えずに言う。


 「『B10987』、お前の処分が決まった。だ。

  たかが、ビール一缶で・・・と、私も思う。だが、仕方がない。

  による決定なのだ。」


  彼は、雑居房の鍵を開けると、管理番号『B10987』を連れ出し、死刑場へ

 と向かった。


 ・・・・


  C国は、犯罪率が高く、収容所は、パンク状態に陥っていた。

  そのため、C国の政府は、収容所の人減らしを考えた。

 

  収容者の強制排除を行い、解決しようとしたものの、それでは、倫理的に問題が

 あると糾弾されてしまうだろう。形だけでも、法による執行であることを示す必要

 があった。

  

  そこで、収容者を排除するか否かの裁定を行う場を作り、他国の者に、その裁決

 を委任することにした。

  オンライン上に裁判所を設け、裁判を行ってもらうことにしたのである。

  

  それにより、現在、収容所の収容者数は、大幅に激減していっている・・・。


そこで目が覚めた。

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