第38夜 ダイス (約2600字)
変な夢を見た。
? 「キミは、今、株式会社 極悪商事の前に立っているよ。」
私 「な、なんだ。天の声・・・?
俺は、いったい・・・どうしちまったんだ?」
? 「あはははっ! 忘れちまったのかい? キミは、『社畜クエスト』のプレ
イヤーだ。今、キミは、『極悪商事から契約をつかみ取れ!』のクエスト
を行っているところだよ・・・。
あっ、そうそう。ボクは、このゲームのマスター、
私 「そ・・・そうだっけ? まあ、いいや。それじゃ、さっそく、極悪商事に
入るよ。失礼しまーすっと。」
GM「OK。極悪商事は、小企業。受付はない。1階建てだ。キミが入ると、すぐ
近くに座っていた社員が、対応に立ち上がった。
かわいい娘だよ。『いらっしゃいませ!』と、微笑みかけてくる。」
私 「それじゃあ、まず、自己紹介するよ。私は、こういう者ですって。
で・・・うーんと、とりえず、ゲームだし・・・。
うん、試しに口説いてみよう・・・。」
GM「えっ! ホントに・・・? キミは、意外と大胆だね。
今後の展開にかなり影響を及ぼすかもしれないよ・・・。
口説くのね。それじゃあ、キミの魅力度をもとに成功率を算出する
と・・・。うーんと・・・20%だ! ダイスを振ってくれ。」
(すると、不思議なことに、私の前に60㎝くらいの10面ダイスが2つ現れた。
私は、掛け声と共に、1個ずつ、ダイスを振った。
注)以後、ダイス振りに関しては、省略させていただく。
ちなみに、振り終えたダイスは、しばらくたつと消えてしまう。)
私 「えーっ! クソッ、21だ。なんてこった・・・。」
GM「残念だったね。でも、大どんでん返しのチェックが出来るよ。
1日3回、幸運度のチェックで、結果をひっくり返せるんだ。
どうする? チェックするかい?」
私 「あっ・・・そうなの? じゃあ、試しにやってみるか・・・。」
GM「そうすると、キミの幸運度とさっき失敗したチェックの差分から算出する
と・・・おっ・・・90%だ!」
私 「うりゃっ! よっしゃ。48だ!」
GM「よかったねえ。成功だ。
彼女は、キミの熱意に負けたようだ。『近いうちに食事に行きましょう』
と言いながら、キミのスマートフォンに連絡先を送ってくれたよ。
それで・・・。」
私 「そ、そうだ。肝心なことを忘れていた。
ここに来た目的を話して、担当者を呼んでもらおう。」
GM「その女性社員は、担当者の元に行き、キミを応接室に案内してくれる。
キミが、応接室で待っていると、担当者と社長がやってきた。」
私 「とりあえず、まず、挨拶しないとな。」
GM「キミの挨拶が終わると、社長が開口一番、こう言う。
『キミ、私の娘を口説いていたようだが、どういうつもりだ!』
社長は、かなり怒っているようだ。まあ、娘を目の前で口説かれたんだ。
無理もないよな。」
私 「えっ! そうなの? それだったら、口説かなかったのにぃ・・・。」
GM「まあ、いまさら、後悔しても遅い。
とりあえず、交渉できる・できないは、ダイスで決まる。
キミの交渉スキルと現状から算出すると・・・。
10%って、ところだな。」
私 「ひくっ! 低いなあ。成功するの・・・厳しくない?
まあ、身から出たサビか・・・。
てりゃっ! 67・・・やっぱ、だめか・・・。
あっ、そうだ! あれを使う! 大どんでん返し!」
GM「うーん、あまり使わないほうが、いいんじゃない?」
私 「いや、ここは、使うぜ! ここで、使わんと、クエストが達成できん!」
GM「わかった。わかった。えーと、算出の結果は、40%だ!」
私 「結構、厳しいな。でも、なんとかなるかな・・・。
フン! よしっ! 32!」
GM「よかったな。無事、契約を取ることができたよ。クエスト達成だ!
おめでとう。キミの経験値に2000ポイント追加された・・・。」
私 「よしっ。それで、これから、どうなるんだ。」
GM「うん。次は、帰宅途中フェイズだ。
ちょっと、待ってくれ。イベントの発生チェックするから・・・。
ええと・・・イベントはなしだ。」
私 「と、いうことは、無事、自宅に着いたのかい?」
GM「ああ、それで、次は、自宅フェイズのイベントチェック。
おっと、イベント発生・・・こいつは・・・面白い。
キミ、『購入した宝くじの当選チェック』イベントが発生したよ!」
私 「へえ・・・そんなイベントあるんだ。面白いな・・・。」
GM「えーと、幸運度でチェックだ。
まず、成功かどうかをチェックして、それから、当選金額を決めるらし
い・・・。えーと、キミの場合、幸運度チェックは、30%だ。」
私 「とぉっ! 25だ! 成功! 当選金額は、いくらかな?」
GM「ありゃっ! ボクの出目が悪いな。残念、300円だ!」
私 「えっ・・・。マジかッ!
クソっ、こうなったら、大どんでん返しだ!」
GM「もう、やめたほうがいいよ。肝心な時に、困るよ。きっと・・・。」
私 「どうせ、もう、一日も終わりだろっ! いいよ、使う!」
GM「わかった・・・。算出結果は、50%。
だけど、成功値によって、当選金額が変わるよ。いいかい?」
私 「ああ。ソイヤッ! あっ! 01だ!」
GM「ここで・・・ここで・・・ここで・・・それを出すかっ!
すごいな・・・キミはッ! 1等と前後賞合わせて、5億円だよ!」
私 「よっしゃ! いただきぃ。へへっ、ついてるねぇ・・・俺!」
GM「さてと、本日の最終チェックだ。
プレイヤーの健康チェックの時間だ!」
私 「えっ? まだ、チェックあるの? しかも、何? 健康チェックって?」
GM「プレイヤーの健康状態を、その日の最後にチェックするのさ。
知らなかった?」
私 「うん・・・。」
GM「まあ、大したことないよ。
プレイヤーが、健康か、病気にかかっっているかのチェックだけだし、
よほどのことがなければ、問題ない。
さあ、とりあえず、振ってくれ!」
私 「えっ? 成功率とかは、ないの?」
GM「出た値に、キミの体力度と耐久度で補正して、その結果をチャートで確認
するんだ。だから、とりあえず、振ってくれ!」
私 「そうか・・・。うーん、ナムサンッ! あっ・・・00!」
GM「あっ、ここで・・・ここで・・・ここで・・・その目を出すっ!
キミ、残念だな・・・アハハハ、なんらかの要因で、即死!」
私 「だっ・・・だいどん・・・。」
GM「残念ッ! 大どんでん返しは、もう使えない。ハイッ! 即死ッ!」
そこで目が覚めた。
私は、起き上がりながら、ひとりつぶやく。
「ダイス運で、何もかも決まるのは・・・困りものだな。
だが、仕事の結果が、ダイス運で決まるのは、魅力的だ・・・。
自分の能力じゃなくて・・・運のせいにできる。」
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