第33夜 3K (約900字)

変な夢を見た。


  私の目の前に、あの女・・・『九麗寺くれいじ 菜音なのん』が座っている。

  彼女は、私の方を見て、へらへらと笑っている。

  いかにも、人を馬鹿にしたような笑いである。

  私は、ついに黙っていられず、菜音に聞いたのだった。


 ・・・・


 私 「なにが、おかしいんだい?」


 菜音「えっ? うーん・・・あなたって・・・『3K』よね。」


 私 「ボクが・・・『3K』?

    菜音・・・ひどいこと言うね。『3K』っていったら、あれだろう?

    『くさい』『きたない』」『きもち悪い』・・・。」


 菜音「えっ? そうなの・・・。確かに、そうかもしれないわねぇ・・・。」


 私 「えっ?」


 菜音「あー。うそ、うそっ! わたしがいう『3K』は・・・。

   『かっこいい』『かわいい』。えーと・・・あっ、そう! 『キュート』!」


  私は、菜音が、必死に笑いをこらえているのを見逃さなかった。

  だから、私は、菜音のこころに入り込み、本当は何を考えているか、読み取る

 ことにした。そのため、彼女の手を強引に取る。


 菜音「ちょっと・・・何をするのよッ!」


  私の頭の中に、三つの言葉が、フラッシュバックのように次々と浮かぶ。


 私 「菜音っ! うそつきっ! 

    言ってること・・・全然、違うじゃないか・・・!

    なんだよっ! 『くだらないやつ』って・・・。

    なんだよっ! 『こうるさい』って・・・。

    でも・・・。」


  その時、菜音が、顔を伏せ、と体を震わせていることに気づいた。

  しまった・・・と、私は思った。

  きっと、私が、菜音のこころを読み取ったように、菜音もわたしのこころを

 読み取ったに違いない・・・。


 菜音「あなたこそ・・・ひどいじゃないっ!

    わたしのことを、そんな風に思ってたなんて・・・。

    なによっ! 『クレイジ(九麗寺)ー』って・・・。

    なによっ! 『きゃんきゃん、うるさい』って・・・。

    でも・・・。」


 私 「『こころから愛してるよ』って・・・ありがとう。菜音。」

 菜音「『こころから愛してる』って・・・あなた、ありがとう。」


  二人は、手を取り合い、抱きしめ合い、イチャイチャし始めたのだった。


そこで目が覚めた。


私は、起きながら、ひとりつぶやく。

「俺は・・・『価値なし』、『金なし』、『恋人募集中』だよ。」

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