第31夜 ライバル (約2600字)
変な夢を見た。
私は、今、とても困惑していた。
目の前で、二人の女性がいがみ合っている。
一人は、妹タイプの女の子。そして、もう一人は、お姉さんタイプの女性。
とりあえず、なぜ、このような状況になっているかだけ、簡単に説明しよう。
・・・・
あれは、今朝のこと。会社に出かける時、気づいた。
私が住んでいる部屋のドアの外側に一枚の張り紙が貼ってあったのだ。
それには、
『今晩、逢いに行きます。 喪羅井(もらい)』とあった。
なんだろう? いたずらだろうか?
考えながらも、なんとなく床を見ると、遠くに丸められた紙が転がっている。
気になったものの、私は無視し、ドアに貼ってあった張り紙をはがした。
そして、ごみ箱に捨てると、会社へと出かけた。
・・・・
帰宅して、部屋でくつろいでいる時だった。
「ピンポーン」と、呼び鈴が鳴った。
もう、遅い時間なのに・・・誰だろう?
そう思いつつ、ドアをあけると、冒頭で紹介した妹タイプの女の子が、立ってい
たのである。彼女は、黒ずくめの格好をし、リュックサックを背負っている。
「お邪魔しまぁーす。」
そう声をあげるなり、女の子は、ずうずうしくも私の部屋に上がり込む。
私は、呆然としてしまった・・・。
あまりのことで、どう対処すべきか、頭が働かない。
彼女は、テーブルの近くに座り、リュックサックを背中から降ろすと、ごそごそ
と中を探りはじめた。そして、一つのファイルを取り出し、私のほうに差し出しな
がら、自己紹介を始めた。
「わたし・・・
えっとぉ・・・本日、お伺いすることを玄関のドアに貼っておきましたけどぉ、
ご覧になられていませんかぁ?」
私は、朝のことを思い出した。だが、名前が違う・・・。
そこで、逆に聞いてみる。
「あなた、
「ちがいますぅ・・・わたしぃ、
・・・
いま、
突然、彼女の態度が、妹キャラから般若キャラに豹変した。
いったい、何が彼女をこうさせるのか?
その時、また、呼び鈴が鳴った。
そこには、冒頭で紹介したお姉さんタイプの女性が立っていた。
黒ずくめの格好をし、トートバックを肩にかけている。
「夜分、遅くにすみません。わたくし、
させて頂く旨を貼っておきましたが、ご覧になられました・・・?」
と、その時、部屋の奥にいた
「おらあ、このクソアマぁ・・・! おうっ、上がらんか、こらぁ!」
「ちッ! もう来てやがったのか? 抜け駆けできたと思ったのによ!」
と、
・・・・
私は、遅まきながら、二人にお茶をだす。
お茶と言っても、ペットボトルの冷茶をコップに入れただけだ。
二人は、それを飲んで、落ち着いたようだった。
私は、二人に聞いた。
「ところで、あなたたちは?」
二人は、それぞれ、ファイルを私のほうに差し出しながら答える。
「わたしはぁ、株式会社デスブリンガーの魂回収係の
「わたくしは、株式会社デスブリンガーの魂回収係、
私は、びっくりした。魂回収係ってなんだろうか? 続けて、私は尋ねた。
「それで、ボクになんの御用で・・・?」
すべて、
「大変申し訳ございませんが、お客様の寿命・・・本日限りとなっております。
そこで、わたくしが、魂の回収に参ったのです。こちらの書類にサインをお願い
します。」といい、先ほどのファイルを
私は、ファイルに目を落とす。そこには、『魂譲渡同意書』とある。
魂を渡す同意書・・・? そんなもの、あるんだ・・・。
「こちらの同意書にサインをお願いします。そうすれば、わたくしが、お客様の
魂を、責任もって回収させていただきます。」
「だぁめぇ。わたしのほうの同意書にサインしてぇ! わたしのほうがぁ、先に
来たしぃ、それにぃ、わたしぃ・・・。
今月のノルマにねぇ、1
「うるさいんだよ! てめえはっ! 引っ込んでろォ!
失礼しました・・・お客様、わたくしも・・・その・・・今月のノルマが、
1
私は、毅然と答えることにした。
「いや、悪いけど、ボクは、まだ死にたくない。だから、同意書にサインするつも
りはないっ! キミたち、いますぐ、出てってくれ! そうしないと・・・。」
私は、最後まで口に出すことはできなかった。
「アイタタタっ、離せっ・・・腕が・・・抜ける!」と、私が叫ぶ。
「こうなったらぁ、強制執行ですぅ! ちょっとぉ、このアマぁッ、離せ!」
「仕方ないですね。強制執行です!
二人が、強く引っ張り合いをするうちに、妙な音が聞こえてきた・・・。
ビッ・・・ビビッ・・・ビリッ・・・ビリリッ・・・バリバリバリッ!
裂けてしまった・・・私の魂が・・・真っ二つに・・・。
しりもちをつく。
「いったぁい。」と、
「あいたたたぁ。」と、
そして、私の肉体は、抜け殻のように、その場に崩れ落ちた・・・。
「あーあ、0.5
これじゃあ、ノルマ・・・達成できないじゃない!」
二人は、それぞれ、私の魂をひきずりながら、帰っていく・・・。
いつまでも、互いに罵声を浴びせながら・・・。
「
「てめえこそっ、そっちの魂、よこせっ! この馬鹿ッ!」
そこで目が覚めた。
私は、起き上がると、ひとりつぶやく。
「あんな魂の抜かれ方されたら、たまったもんじゃない・・・。」
その時、どこからか、声が聞こえたような気がした。かすかな男の声が・・・。
「俺は、もっと上手に抜くよ・・・気づかれないようにね・・・。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。