第24夜 ペットボトル (約1250字)

変な夢を見た。


  私は、透明な壁に覆われた何かの中にいる・・・。

  とりあえず、今は、船と表現しよう。

  船は、上下に揺れている。

  船の三分の一が水面につかり、どこかに向かって、流れるように進んでいる。


 ・・・・


  これは、これは、現代の物語。

  

  らんこちゃんが、川で遊んでいると、  

  どんぶらこ・・・どんぶらこ・・・と一つのペットボトルが流れてきました。

  

  そのペットボトルには、ラベルがなく、キャップが閉まった状態。

  らんこちゃんには、そのペットボトルの中に小さなお人形さんがいて、こちらに

 むかって、手を振っているのがわかりました。


 「まあ、たいへん。お人形さんが、ペットボトルの中に閉じ込められてる。

  助けてあげなきゃ・・・。」


  らんこちゃんは、いい子だったので、助けてあげることにしました。

  らんこちゃんは、そばに落ちていた枯れ枝で、ペットボトルを岸へとたぐりよせ

 たのです。


 「よかった。間に合って・・・。あ、おとこのこだ・・・。」


  ペットボトルの中にいたのは、お人形さんではなく、小さいおとこのこでした。

  そのおとこのこは、らんこちゃんに話しかけます。


 「ねえ。ぼくのこと、たすけてよ。ペットボトルのふたを開けてくれれば、

  ぼく、おそとに出れるんだ。そしたら、キミにこれをあげる。」


  おとこのこは、そう言うと、何もないところから、キラキラ光る宝石をとりだし

 たのです。


  らんこちゃんは、おどろきました。


 「まあ、どこから、それを出したの・・・。でも・・・きれい・・。」


 「はやく、ぼくのこと、ペットボトルから出しておくれよ。そうしたら、これ、

  あげるよ!」


  らんこちゃんは、宝石がほしくてたまらなくなったので、おとこのこの言うこと

 を聞いてあげることにしました。


  そのとき、仲良しの青いことりさんが、飛んできて、こう言いました。


 「らんこちゃん! だめだよ。開けちゃ、だめ! 

  あいつ、あくまだよ!

  あいつ、悪いことして、ペットボトルに閉じ込められたんだ! 

  あいつを出したら、代わりにキミが閉じ込められちゃう。開けちゃだめだよ」


  ことりさんは、らんこちゃんの周りをぐるぐる飛んで、言い続けます。


  おとこのこは、らんこちゃんに言います。


 「そいつの言うことなんか、信じちゃだめだよ。はやく、開けて!」


  らんこちゃんは、その時、初めて気づきました。

  おとこのこの頭に、角がはえてきたのです。

  そして、お尻にも、しっぽがはえてきました。

  らんこちゃんは、びっくりしてしまいました。ことりさんの言う通りです。


 「おまえなんか、あっちにいっちゃえ!」


  らんこちゃんが、ペットボトルを川に向かって投げた途端、ペットボトルの中の

 おとこのこは、みにくいあくまに変わっていました・・・。


  ペットボトルは、川に落ちると、再び、どんぶらこ・・・どんぶらこ・・・と

 流れていってしまいました。


  みなさん・・・ものをひろっても、すぐに開けてはいけませんよ・・・。


 ・・・・


  私は、再び、川へと戻ってしまった。

  あの女の子を騙せてさえいれば、今ごろ、自由だったのに・・・。


そこで目が覚めた。


私は、ひとりつぶやく。

「お前、最低だぞッ・・・!」

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