第12夜 〇〇に乗る (約550字)

変な夢を見た。


  わたしは、〇〇に乗って、草原を駆けていた。

  〇〇は、私の愛〇〇。気分がすぐれない時は、〇〇に乗って、草原を駆ける。

 

 「はいどぉ。はいどぉ」と言って、〇〇の横腹を蹴る。


  突然、〇〇がいななき、後ろ脚だけで立ち上がる。

  わたしは、落ちないよう、〇〇に必死につかまる。

 

 「〇〇のばか。落ちるじゃない!」


  〇〇はいななき、今度は全力で走り始める。


  ママが遠くから、優しい笑みを浮かべながら、わたし達を見守っている。


  突然、〇〇がしゃべり始める。

 「菜音なのん・・・。

  パパ、もう疲れたよ・・・。お馬さんごっこは、終わり・・・終わり。」


  パパは、ゆっくりと減速し、止まってしまった。 

  草原も、いつの間にか、畳張りの和室に変わっている。


  わたしは、不満そうな顔をして、パパから降りる。

  パパは、わたしを抱え上げると、大きい肩にわたしを乗せ、クルクルと回りだ

 す。


 「キャハァハハハ、アハハハハ・・・。」


  わたしの笑い声が、部屋中に響き渡る。


そこで目が覚めた。


どうやら、白昼夢を見ていたらしい。


今、わたしの前で、家が取り壊されている。

わたし達、家族が住んでいた古い家が・・・。

わたしの想い出が、ぎっしりと詰まった家。


あの時のパパの背中が懐かしい・・・。

あの時のママの笑顔が懐かしい・・・。


わたしの頬を涙が伝った。

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