【愛の石】の
ふるなる
第起話
リア充爆発しろ。
今年もまたほぼ冗談でできたくだらない言葉をネットの中に書き込んだ。クリスマスはバイトに勤しんで終わってしまった。ありきたりなネタにネットの輩が笑いながら返信していて、物足りない心を埋め合わしていた。だけど、やっぱり彼氏欲しいなー、と思う。
まだ大学2年生。今まで恋愛はできていない。友達と比べると遅い方だと感じるが、世間的には20代の始まりにいる私はまだ恋のチャンスは始まったばっかしだ。これからが恋のピーク時だ。そのピークを見逃す訳にはいかない。
地下鉄へと向かう階段をポジティブなイメージを浮かべながら降りていく。
おっと──。
足を滑らしてしまった。多少転げ落ちる。階段を下りてる時に妄想に浸るからこうなる。階段を下りた先で何とか立ち上がる。何ともなかったようだ。私は服についた埃を払った。
再び歩もうと足を前に出した。
それは唐突な出来事だった。
突然体が重くなっていく。思わずその場に膝をつく。
重い。
のっしりと重い。
重い、重い、重い。
いつしか床に這いつくばっていた。
階段の折り返しの所で床に倒れている私。車のような重さのものが私にのしかかっている。
動けない私に気づかないのか通り過ぎていく通行人。
誰か助けて──
声がでない。
体が動かせない。苛立ちだけが募っていく。
誰か助けろよ!
時間だけが過ぎていく。退屈よりも苛立ちが募っていく。もがいてもどうしようもならない。
苦闘した先に右腕だけは動かすことができるようになった。
私を無視して通り過ぎていく通行人Aに触れる。彼女は私の方向を見たが、すぐに無視して駅に向かう。
助けろよ!!
許せなかった。気づいたのなら助けろよ。
怒りで爆発しそうだ。
爆発するのはリア充だけでいいのに、恋愛すらしたことのない私が爆発してしまいそうだ。
怒りに身を任せても動けはしなかった。
けど……
さっきよりかは軽くなった気がする。
のしかかった重しが少しばかしか軽くなった気がした。
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