ウザい
エリー.ファー
ウザい
誰にも文句は言わせない。
そう思って生きてきた。
そのことは何の間違いもないと思っている。
けれど、その度に文句を言われた。
いやいや、こっちは必死にやっているのだからしょうがないだろうと思うのだ。
実際、私はこの地球の英雄であって、地球を侵略しようとするエイリアンたちから人間を守っているのである。これは事実だろう。命をかけているし、日々訓練をして、被害を最小限に食い止められるように考えて行動している。
英雄という名前だって、私が欲しいと思って手に入れたものではないのだ。
自分の生き方を現在の状況に照らし合わせたところ、一番それらしいのが英雄であったというだけのことだ。
哀れではない。
蔑まれる様なことは一切していない。
自分の考え方を生き方で示しているのだ。
英雄は仕事ではない。私の生き方そのものだ。
私が。
私が他人から押し付けられた称号の一つでもあるわけである。
本当だったら、多くの人と手を繋いで歩きたかった。遠くの町までクレープを食べに行きたかった。ショッピングだって当たり前のように楽しみたかった。
でも。
そんなことはできないのだ。
生まれた時には既に英雄だった。血が、その流れが、環境が、普通の人生を許してはくれなかった。
宿命づけられているとはよく言ったものだが、それだけで説明のつくものではない。
私は英雄というものに何の偏見も持っていない。自分自身がそうなのだから、それは当たり前かもしれない。けれど、英雄だって人間なのだ。生身であり、そこには命が宿り、その命はたった一つしかないのである。
私にも大切なものがあり、そこには優先順位が存在するのだ。常に社会のために、命のために、地球のために行動できるわけではない。
英雄としての能力はサウザンドラブ。
千の愛を用いて、人々の力の支えとなり、そのまま太陽の如き力を行使する。
文章にするとよく分からないが、とにかく強いのだ。これで救ってきたのは地球だけではない。太陽も、月も、ヒランデ星の壊滅だって食い止めたのだ。
今は、蜥蜴になって地球の表面を這って移動するのがやっとだが、変身するべき時がくれば、私の体は勝手に反応するのである。そうして、私は自分のナルシズムと共存することにも成功している。
蜥蜴は、余り好きではない。
自分のことも余り好きではない。
けれど、このようにして偉大な力を手に入れてしまったのだから、その反動のようにこのような姿になるのは致し方ないというものである。
分析してみれば、それは簡単に分かることである。
私は定期的にエイリアンを殺すことによって、ストレスの発散を行っているのである。自分の中に発生しそうになる、邪悪さに向かい合うための時間を作りだしているのである。
本当の言葉を自分の心の底から紡ぎだし、それを使って戦う限り、この体が滅びることはないだろう。
私は表面的には英雄だが、冷静に見れば悪役でもある。
しかし。
その核となるところにあるものは、もっと単純である。
最強。
残念ながら、これのみである。
そこにどちらが上で、どちらが下なのかという判断が後からついてきただけに過ぎないのだ。
これもまた、ウザい、というやつなのかもしれない。
しかし、真実なのである。
そう。
残念ながら。
ウザい エリー.ファー @eri-far-
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます