第54話 戦う理由
大体の子供用品が揃うウサギちゃんマークの店の服をまとったミーティは、痩せてガリガリではあるものの大分見違えた。体重は少しずつ戻していけばいいと思う。
昼にはインスタントラーメンを柔らかめに煮てみんなで食べた。ミーティも自分で食べることができるなら一安心だ。フォーク使用だったが。
どうやらミーティは向こうの字も分からないようなので今はPCで子供用の教育番組の動画を見せている。これは食いつきが凄かった。動画サイトの使い方も動画タイトルの日本語は読めないものの何となく操作はできていた。この調子で日本語を覚えてしまってほしい。
「ではマイさん。子守りを頼みます」
「は~い。心配しなくても大丈夫~」
アユミさんの強い希望もあり、9層の敵を倒しているマイさんにミーティの子守りをお任せして、その他のメンバーで9層レベル上げと10層への階段を探すことになっていた。
「ミーのレベルアップも試してみたいところですが体力が戻ってからですね」
「漫画やゲームもある程度やらせてからですか?」
「ええ、もちろん。ちゃんと神が見てくれていますから」
そう言ってほほ笑むアユミさんは現地人のレベル上げとジョブシステムの検証もやりたそうだ。
「私もレベル上げ手伝います。むしろ任せてくれて大丈夫です」
黒縁眼鏡にひっつめ髪となった地味めなアイリさんの鼻息が荒い。子供好きなんだろうか。ノアさんも頼まなくても手伝ってくれそうな顔をしている。
やってくれるなら楽なので、とりあえずうんうんと同意しておいた。なんだかアユミさんの視線が冷ややかな気がするが。
「では安全第一で、早めに戻る感じで行きましょう」
普段なら早く戻ろうなどとは言わないアユミさんの号令で我々は迷宮に潜り始めた。
「ノアさん前に出過ぎです!」
「すいませんっす!」
今日は槍をたずさえたノアさんだが9層への道中で珍しく前のめりだ。前衛盾役が二人いるとは言え、前に出るには防具もスキルも持っているわけではない。戦闘に積極的になったというより、やはり今朝のミーティのことが影響しているようだ。
「焦らず行きましょう」
「……はいっす」
せめて助けた人間くらいは守れるように……というところか。
アユミさんの話ではノアさんは優しすぎて直接戦闘には向かないとのことだったので、どんな形であれ戦闘に対して覚悟や積極性が出るのは生き死にがかかっている現時点では望ましい。ミーティを助けたことはそんな副次的な効果も生んでいた。
「我々は基本後衛なので、間合いや立ち位置のポジショニングを気を付けてみるといいですよ」
「はいっす!」
恐らく魔道士スキルを覚えてもらうことになるのだ。敵から攻撃されない位置から一方的に魔法矢を撃つといった射線位置の取り方なんかを意識してほしいところ。
9層についてはアユミさんとアイリさんが盾役を交代しながらゴーレムの背中の急所を狙うことであっさり片が付いた。しかし10層への階段は見つからないまま3時間ほどで帰還したのだった。やはりそんなにすぐ階段が見つかるほど迷宮は甘くない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます