第44話 9層到達
食器も足りなかったので紙皿に割り箸とキャンプのように3人で晩飯を済ませた。キャンプといっても我が家だけど。
「ごちそうさまでした。美味しかったです」
「お粗末様でした〜」
「ごちそうさまです」
なかなか家庭的なお味で満足でした。1人じゃ肉じゃがなど炭水化物に炭水化物なんて邪道などと浅はかに考えてしまうが肉じゃがに白米はありだ。なにより作ってもらうというのもいいものだ。
「今日はどうしましょうか。8層潜ります?」
「毎日で疲れてない?ゆっくりしててもいいよ〜」
「お任せします」
アイリさんは相変わらずそっけないが、にっこり笑うマイさんが優しい。言われてみると休日もなく潜り続けている。というか休日ってなんだっけ?
……そういえばダメ男製造機と呼ばれていたんだったか。ここで優しさに甘えるのは危険だ。
「レベル19まで上げちゃいましょう。9層への階段も探したいところですし」
「は〜い」
怠け心を抑えつけ、装備を整え迷宮へ行くことにした。
「こっちで日本刀買おうかな〜」
それはアカン気がする。夜な夜な辻斬りが出没しそう。
「結構、値段高いと思いますよ。向こうで探した方が実用的ですし」
「なるほど〜。先生、お買い物に付き合って〜」
「はいはい」
先程、迷宮に貼り付けたアルミホイルはまだそのままだった。いや、床に設置したやつだけ少し沈んでいる。どうやら床に飲み込まれていくタイプのようだ。壁と天井のはそのままだ。
「これなら壁に貼り付けでいけそうですね。両面テープでいけるかな……」
そんなことをぶつくさ言いながら、アイリさんは高さを測りながら壁に画鋲を刺したり釘をうち付けたりしていた。業者の方みたいだ。
確認を終え、8層へ。避けタンクになりつつあるアイリさんを先頭に、自分、マイさんと続く。
ブンブンと飛び回るトンボも、マイさんの迅動の前ではただの的だった。途中からアイリさんも挑発で動きを止めなくとも大して変わらないことに気付いてしまったのか挑発も使わずにサクサクとトンボとミイラを駆除していく。
マップ用のメモ紙に分岐を10ほど書き込んだ2時間後、ついに下の階層への階段を発見した。
長かった。
思わず、やったどー!と叫んでしまうくらいには長かった。
1人ではしゃいで恥ずかしくなったが致し方ないのだ。
「どうします先生〜?」
「偵察だけ行ってみましょうか。ちょっとでも危険あれば即撤退で」
「りょうか〜い」
「分かりました」
新しい層はいつもは1人で偵察していたが、この期に及んで1人で行く訳にもいくまい。毎度、新しい層には撤退させられているのだ。今回も安全第一で行こう。
撤退の合図などの軽い打ち合わせをし、俺たち3人は盾役のアイリさんを先頭にゆっくりと階段を下っていった。
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