第24話 会員2号


「おじゃまします〜。あれ?アユミ〜?」


 勝田さんからも今日はマイさんの経過みてやってくれとメッセージきていたのもあり、マイさんの具合を聞くついでに冒険者会員の話を振ると深夜にも関わらずノコノコとやってきた。


 黒髪ボブカットで背が低めなのにグラマーなバツイチのマイさんだ。先日の荒れ具合が嘘のような佇まい。バッチリメイクもあるが何というか身体の至る所から色気が滲み出ている。


「お久しぶりです。マイさん。私、実は先生に弟子入りしてまして」


「え〜なにそれ。マイも弟子入りする〜!」


「じゃ入会ですね。第2号です!」


 どっちが年上か分からないような会話が勝手に進んでいき、トントン拍子に決まっていく。決まるのはいいがちゃんと意思確認はしたい。


「アユミさん、ちょっと待ってください。マイさん。今、マイさんはアルコール依存症です。アルコールに負けない身体と負けない精神を……」


「異世界でレベルアップすれば全部解決です!」


「なるほど〜!」


 ……な、なるほど?


「アユミー頭いいもんね〜。難しいことは任せたよっ」


「ということで入会金は10万円になります」


「は〜い。今度でいい?」


「そうですね。私も今度持ってきます」


 アユミさんのショートカットであっさり決まってしまった。


「いいんですか?そんな適当な感じで」


 アユミさんに小声で耳打ちする。


「一度、信頼するとチョロくて甘いのがマイさんです。ダメ男製造機と裏で呼ばれているのは伊達じゃありません。いいんです。ちょっと待っててくださいね?」


 ダメ男製造機ってひどいな。女子の陰口凄そうだもんなぁ。


「マイさん、先生と仲良しだったんですね?」


「昨日、面倒見てもらって〜。家の片付けまでしてくれたの。そんな人初めてで。男なんて大体ヤリモクなのに〜」


 清純そうに顔を赤らめるマイさんだが内容が全然清純じゃない。ヤリモクはヤル目的だろう。普通は治療に行って襲ったりしない。普通だよね?


「それにずっと心が重かったのにスッキリしてるの。先生がいてくれたら私もっと頑張れる気がして。だから私、頑張る〜」


 確かに回復魔法があれば夜の商売も頑張れると思う。でも何を頑張るのだろう。心が重かったのはきっとアル中のせい。



 アユミさんがやや呆れた目でほらなと言っている。


 ほらなと言われても特段な事はしていない。普通で常識的な範囲のはずだ。とりあえず信頼は得ているみたいなので良しとしよう。メンタルがアンバランスなマイさんだが精神力向上で改善するかもしれない。きっと改善するはずだ。


「じゃ時間も遅いのでちょっとだけ異世界迷宮に潜ってみましょうか。マイさん、敵を倒してもらいますがRPGとかのゲームは知っていますか?異世界アニメでもいいですけど」


「スマホのMMOならそれなりに〜」


 ゲーマーがここにもいた。


「じゃ大丈夫ですね」



 刀を渡したマイさんは異世界順応がアユミさんより重めだったり、蜘蛛を心底嫌がったりしていたが、倒すと消えてなくなるのを見て嬉々として狩り始めたので2層まで行きレベル6まで上げて切り上げた。


「異世界楽しい〜」


「ストレス飛んでっちゃいますよねー」


 背後の女子達が怖い。迷宮で殺戮を行うのが楽しいだなんてどんなストレスを抱えているのやら……。


「あ、先生。会員になったので寝泊まりオッケーですよね? 迷宮街が開くまで帰宅するのも面倒で。あと折り畳みベッドとかあると寝袋でもありがたいんですけども」


「えっお泊りいいの〜?やったー」


 背後の女子達が怖い。早く別の部屋も借りねばプライベートスペースがなくなってしまう。


「入会金で何とかしますので入金お願いしますね」


 営業スマイルでなんとか1文を捻り出した。ベッドなんて置いたら住み着く人が出るかもしれない。折り畳みのマットレスあたりで我慢してもらおう。



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