10話「森の謎 1 」
「確かに......森の周りを歩き始めた時につけた目印ですね......」
「おいおい、どういうことだよこれ......」
目の前にあるのは、明らかに数時間前に作った目印と同じものだ。
切り口の形も、樹皮の色も、長さも、完璧に同じだ。
趣味以外の記憶力が結構低い俺でも確信が持てる。
まぁ元アニオタラノベオタな俺としては「異世界生活」自体が趣味であり夢や妄想の中みたいなものではあるのだが。
......それならなぜ、目印が目の前にあるのか。
俺たち二人は森の外縁をひたすら歩いていたから、それはつまり森を一周してきたことになるのだ。
考えられる可能性は今のところ一つだが......
「......なぁ、本当に森の近くに町があるのか?」
「はい......確かにあるはずなんですが......」
「この謎、君はどう思う?」
「えっと、この迷いの森に入ったら方向感覚が狂うので、それに似たような別の魔法が森にかかっているのかもしれません。」
「なるほどな。もしそうだとしたら、森の近くにいる間は周りの町が見えなくなるとか、そんな感じか?」
「可能性はありますよね.......」
もしそうだとしたら、森の外縁なんかじゃなくもっと大きく周らないといけないことになる。
そんなことをしたら森を見失ってしまうかもしれない。
そして、そんなことを考えていた時。
ぐるるるる......
「......?」
「......っ///」
どこからか音が聞こえた。
「なんだこの音?まるで狭い空間の中に液体や空気が出入りした時みたいな......」
「おなかが鳴ったんですよ!というか、わかってましたよね!?」
「ははは、すまんすまん。腹が減ったなら、なにか食料を調達しないとな。」
そう、その音は少女の腹の音だった。
ちなみにさっきの説明は「胃や腸の中に空気が出入りしたり胃液や腸液が出る時」という意味だ。
......しかし、困った。キノコ軍団からのドロップはすでに全部食べてしまった。
そして経験上、この森にはほかに食料になりそうなものはない。
......詰んだな
まぁ、探せばもしかしたらあるかもしれないし、森の中で探してみようか。
「森に入って何か探すか。木の実とか」
「そうですね。すみません、付き合わせてしまって。」
「いや、俺も寝起きで腹が減ってたから大丈夫だよ。」
そんな会話をしながら俺たちはまた森に入り、食料を探し始めた。
道中でふと後ろを振り返ると、そこにはさっき通ったばかりの道があった。
どうやら森の主はあのキノコだったようだ。
主にしてはすごく弱かった気がするが......
森に入って数分でリンゴによく似た木の実を見つけ、朝食を済ませた直後。
「どうしたんだ?急に立ち上がって」
「いえ、別になんてことはないんですが......なにか気配がするんです。」
「気配がするのはなんてことあるだろ」
「少し見てきます。えっと......そういえばお名前を聞いていませんでしたね。私はラト・フィリアです。ラトと呼んでください。あなたは?」
「そういえばまだだったな。俺はアルラス・フォートだ。アルラスかアルって呼んでくれればいいよ。」
「わかりました......アルラスさんはここで待っていてください。」
「ん。わかった」
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アルラスさんに待っているよう伝えて、私はその"気配"がする方へと歩き出した。
草むらをかき分けて進んでいくと、目の前にある光景が広がった。
「あ、あれ......?」
森の木々の隙間から、建物が見えた。
さらに進んでいくと、そこには見慣れた、私が住んでいる町があった。
そう、森を抜けたのだ。
さっき後ろを振り向いたときに道が残っていたから、理由はわからないけど迷いの森の魔法が解けたのは知っていた。
でも外周何時間もかかる森を数分で横切れるはずがない。
つまり、迷わせる魔法は解けていてもまだ何か魔法が残ってる......?
とりあえず、アルラスさんの元に戻ろう。
そしてこのことを伝えて、一緒に町へ行こう。
そう思い、私は来た道を引き返した。
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