129話

アスランは王都のパレード1週間前に到着し、門番に冒険者カードを見せて街に入ろうとしたが、何故かすぐに王城に行くように言われた。


しょうがなく仲間は王都の家に向かい、アスランは一人で王城に向かった。


もちろん馬車を手配され、一人で行くように言われているのだ。


そうして何度か訪れていた応接室に通され今はソファーに座っている。


しばらくして扉が開かれるとそこにはベルトラン王とSランク冒険者のジョニーが入ってきた。


アスランはこの組み合わせに驚いている。


その表情を読み取ったベルトラン王はソファーに座ると話かけてきた。

「流石のアスランもこの組み合わせは考えも及ばなかったみたいだな」


「誰だって分からないと思います。てっきり褒賞のことかと思っていましたので」


「褒賞の件も間違いではないが…、まあいい、簡単に終わる褒賞の件を先にしよう。何が欲しい?」


「あ、あの~、褒賞が軽いのりで話されることがビックリなんですが…。」


「褒賞なんて何でもいいからな。どうせ地位も名誉も欲しがらないのだろう?カッカッカ」


「初めてそんな笑い声を聞きましたよ。もちろん地位や名誉には興味がないです」


「ベルトラン王、先にアスランに聞いておくことがあるんじゃないですか?」


「おお、そうであった」


こうしてベルトラン王は精霊の宿主のことやドラゴン討伐のこと、そして称号の件など様々なことをアスランに聞いた。


アスランも正直に今回の内容全てを隠さずに話した。


「やはり、そうか。では最初の話に戻るとしよう。褒賞に欲しい物はあるか?」


アスランは真剣な瞳で伝えた。

「実は今回は欲しい物?正確にはして欲しいことがあります」


「珍しいな。遠慮なく話せ」


「今回のスタンピード、もしくはブラックドラゴン討伐の褒賞としてグラス領に精霊フローズンの墓を建てて欲しいのです。そして、精霊の里の復旧に費用を掛けていただきたいと考えております」


「それは先程話した精霊様の遺言だからだろう。お前自身の褒美がないではないか?」


「俺はあいつに生かされたんです。そしてあいつは俺のために死んだんです。だから絶対にあいつの言葉だけは実現しないと俺は前に進めないんです。」


「そう力むな。しないと言ってる訳ではない。グラス領を救った精霊様に対しての褒賞として王都が全力で支援しよう。だから他の褒賞を望みなさい」


「他ですか?他には亡くなった家族の補償を手厚くしてほしいぐらいしか…」


「本当にお前は欲がないな。大臣が困る訳だ」


「あ、一つだけありました。もしあればですが精霊の装備が欲しいです」


精霊の装備と聞いてベルトラン王の目が鋭くなった。


「あ、なんかダメでしたか?」


「いや、褒賞は精霊の装備で大丈夫だ。パレードの後の授賞式の褒賞でも同じ流れで褒賞を授受することとする。いいな?そして装備の話がでたから本題の話をしよう」


「はい。やはり何かあるのですね」


「ここからはお前の人生に大きく関わってくる、慎重に聞くように」


アスランは何事かと思いながら背筋を伸ばした。


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