魔法兵戦記 地獄の底で僕らは笑った
@SSDD
自序
あの凄惨な大戦が終結して、既に四十年が経った。
僕にも子が生まれ、今年は孫が生まれた。
四十年でこの国も大きく変わった。
ときたま僕は、あの戦争、僕が身を投じたあの戦いは、夢だったんじゃないかと思うことがあるんだ。
白昼夢を見ていたんじゃないかと。
それほどまでに、僕の戦争の記憶には現実感がない。
この国の傷もすっかり癒え、街は蘇った。
まるで最初から、大戦など無かったと言わんばかりの光景が、街中に広がっている。
しかし、それでも僕の心はあの時代に取り残されたままなんだ。
四十年間いつも心の奥底で、幸せを享受することへの罪悪感が、僕の胸をズキズキと古傷のように突き刺してくる。
この痛みが、僕を過去に引きずり戻し、あれは紛れもない現実だったと訴える。
だからこの節目に、僕はあのとき経験した全てを告白しようと思う。
月並みな言葉かもしれないが、それが僕の責務だと思ったんだ。
僕は毎晩、眠るたびに戦友達と顔を合わせる。
彼らは未だに、あの溌剌としたあどけない姿のままで、俺達を忘れないでくれ、と僕に呟くんだ。
パウル・クラーメル 元伍長 大陸暦1985年 初夏
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