かんちがい・1

 念のため。

 転んだとき、たしかにパンツは膝のあたりにあった。


 ミムは、高速膝すりすりで後退した際に、

 ふくらはぎ同士もすり合わせることによって、

 パンツを足首まで移動させたのだ。

 だから素早く脱いで隠すことができたというわけだ。





 ――――ミッション・コンプリート!


 ミムはさわやかな笑顔でベッドに腰を下ろした。


(パンツ問題もかたづいたし、

 あとはを見られたかどうか、確かめないとね)


 これでやっと四章の続きに戻った。

 話、進まねぇー…………





「ね、ヒロくん」


「うん?」


「えっと、あの、あのね」


「なに?」


「だからぁ…………」


 ミムはうつむいて、

 髪の毛をいじったり、

 スカートのすそをいじったり、

 シーツを指先でくるくるしたり。


 赤くなってもじもじしているのがかわいい。

 その理由がこんなことでなかったら、だが。


「だから、なにって」


「うん。ほら」


「『ほら』じゃわかんないじゃん」


「うん。あのね?

 さっき(部屋に入る前)ね、

 なにか(手でもぞもぞ)見た……かな? って」





 なにか見た? っていわれるとホラーみあるが。


 ちなみに、ヒロハルはこう解釈した。


 ――――さっき(転んだとき)、

 なにか(足でもぞもぞ)見た?

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