50話 咲来楽と付き合った場合。

─俺の名前は春咲勇気。


先日までごく普通の高校生だった。そう、は。


夏休みが開け、始業式。その日に転校生の紅条咲来楽がやってきた。

そして、出合い頭に抱きつかれた。当然、クラスの男子から嫉妬を買った。


なんでも、俺の母と再婚した義父の連れ子らしい。そして、俺に一目惚れしたらしく、その日のうちになんと付き合うことになった。


「じゃあ…お兄ちゃん。」


「?どうし、…た?」


咲来楽は息を荒らげながら、一歩、一歩と近づいてきていたのだ。


「お兄ちゃん…大好きだよ♡」


そう言いながら、バッ、と服を脱ぎ捨てる。


…カッコいい、などと思ってしまったが、そんなことを思っている場合じゃないな…貞操の危機だ…撤退あるのみ…!


俺は瞬間的に走り出す。しかし、家に隠れられる場所など限られている。俺は自分の部屋へと逃げ込み、鍵をかける。


「はぁ、はぁ、やった、か…?」


フラグっぽいことを言い、扉に耳を済ませる。


…どうやら、追ってきていないようだ…


………うん?


それは、すなわち、追う必要が無いということ…


パリン…ガチャ、ガラガラ…


後ろからガラスの割れる音と、窓の鍵を開ける音が聞こえた。


俺はゆっくりと後ろを振り返る。


そこには妖艶な笑みを浮かべた咲来楽がいた。鍵を閉め、窓も咲来楽がいることで、使えない。


つまり、密室状態だ。


「お兄ちゃん♡」


あ…もう無理だ。


俺は諦めて、咲来楽とヤッた。


10/4。この日は何か、良くないことが起きる気がした。


その予感は当たっていた。


咲来楽と一緒に帰って、次の日テレビを見ると、ニュースで、女子が誘拐され、強姦されそのまま殺された事件があったそうだ。


咲来楽が昨日一人で帰っていたら、もしかしたら咲来楽が狙われたのかもしれない。


咲来楽がそうならなくてよかったと俺は改めて思ったが、何故だろう。何か、足りないような、ような気がするのは…?




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