25話 楽しい記憶と悲しい記憶。

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─ああ。本当にあの頃は楽しかった。こんな自分なんかに可愛い彼女が3人もでき、ハーレム状態。あんな夢のような状況で俺はどうして素直になることが出来なかったのだろう。3人の愛情は酷く歪んだものだった。嫉妬が強く、束縛もあった。だが…


たとえ形がどうであれ、俺は愛されていた。

…誰もが羨むぐらいに。


だが、それに俺がその思いに応えた事は一度もなかった。

なんであのときにその思いに応えることが俺は出来なかったんだろうか。


今でも思い出すとそう思える。


『生きたい。』


─なんで?生きて、俺はどうする?


『まだ死ねない。』


?死ぬのに躊躇う必要があるのか?                   


『死んだところで何になる。』


─決まってる。みんなに会うんだ。


心の中にいる自分に問われる。しかし、俺はその言葉を掻き消した。生きたいと思ってしまったら、亜希菜や美春、咲来楽に会えないからな…


咲来楽が3人目の彼女になり、なんだか自分の周りが一変し始めた時だった。…まぁ、亜希菜が彼女になった時点で自分の周りは一変し始めたが。


でも、あの時は確か─

そう。突然。本当に突然起こった。思い出すと胸が締め付けられて…苦しくなる…あの悲しい記憶─


でも…それでも俺はすべてをもう一度思い返すんだ。悔いが残らないように。死んで、生まれ変わった来世でコレラの記憶を枷として。


「………ふ」


俺は不敵に笑う。


─ああ。そうだ。俺はこんなところで死ぬんじゃなくて…


─俺はあの時に死ぬべきだったんだ。


そう呟いて再び、5年前の記憶を思い返した。


…自殺する要因にもなった“あの”出来事を。


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