第45話 ピクニック1

[まえがき]

章分けはしていませんが、ここから新章の開始になります。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 タートル号に夢を膨らませた俺は、次に何をしようかと考えた。そう言えば、俺からすれば今日食べたハンバーガー屋のアイスクリームは今一だった。


 これから一跳びしてアイスクリーム屋でアイスを仕入れてこよう。確かいつもの大型スーパーの中にアイスクリーム屋がテナントとして入っていたと思うが、違ったら違ったで仕方がない。時間は十分あるから探しても知れているし。


 あと、洋菓子屋でケーキ類を仕入れてもいいな。これも女子や子どもたちに受けるだろう。みんなの嬉しそうな顔を想像すると、いろいろ名案が浮かんでくる。そんな余裕があるのは、きんを作るだけでいくらでもかねが稼げるので、経済的な心配が皆無になったからと、華ちゃんが加わって話の通じる仲間ができたってとこともあると思う。



 アイスクリーム屋は俺の記憶通りスーパーの中にテナントとして入っていた。


 陳列ケースを覗いた俺は店のお姉さんに、「持ち帰りで、全部シングルコーン」


「32種類全部ですか?」


「そ」


「はい。全フレーバー、シングルコーン承りました。

 少々お待ちください。

 お会計を先に。

 ……。

 XXXX円となります」


 会計を済ませてアイスを待っていたら、紙袋を2つ渡された。開けてみたら、一つの紙袋に台紙が3つ並んでいて、台紙一つにコーンが6個ずつ刺せるようになっていた。6×3+6×2+2、全部で32個。


「お姉さん、パンフレットとかある? どれがどれだかわからないから」


「アイスの説明はこちらです。どうぞ」


 32種類のアイスの説明が写真と一緒に載ったパンフレットを受け取って、俺は店を出た。出たと言っても出入り口などないオープンな店だったけどな。


 店を出た俺はすぐにアイテムボックスに紙袋をしまって、忘れぬうちにコピーしておいた。これで好きな時にいくらでもアイスクリームを食べることができる。


 アイスとなると、乳製品だ。アイテムボックスの素材ボックス内の素材と空気から作るとなると足りないものが出てきそうなので、俺の負担が大きくならないよう、食料品売り場にいって1リットルのパック牛乳を10本ばかり買い込んでやった。もっと大きなパック牛乳があればいいのにとつくづく思うよ。


 あとはピクニック用に紙コップ、使い捨ての紙製の小皿とアルミ箔製の大き目の皿、割りばしやプラスチックのナイフとフォークを買っておいた。ナイフとフォークは100個くらいが束になったものだ。どれもその気になればコピーしなくても作れそうだったが面倒なので買ったまでだ。


 アイスを買い込み、ピクニック用の小物を仕入れた俺は、次にケーキ屋にいくことにした。俺の知っているケーキ屋はこのスーパーの近くに1軒と、駅を挟んで駅前に2軒ある。スーパーの近くのケーキ屋は最近できたケーキ屋で、俺はまだ入ったことはないが、店の前を通った感じでは駅前の2軒に比べて高級そうだった。高級=おいしい、とは限らないが、どうせ俺も含めて大した舌を持っているわけではないので、そこらへんは気にしないでもいいだろう。


 ということで、俺は近くの高級ケーキ屋、洋菓子屋とも言う。そこにいくことにした。


 店に入ると、すぐ正面のショーケースの前に客が並んでいたので俺も順番の最後に並んだ。しばらく待って俺の番になったところで、ショーケースの向こうに立つ女子店員に、


「このケースに入ってるケーキ、全種類一つずつください。あと、ケーキの名まえとか説明の書かれたパンフレットがあったら下さい」と、注文した。


 店員二人がかりでケーキ全種類を一つずつ箱に詰めていき、3箱でき上った。その3箱が大きな紙袋に入れられて手渡された。紙袋の中にはパンフレットも入っている。


 言われた金額を支払って店を出ようと踵を返したら、店にいた他の客が俺の方をじっと見ていた。そんなに欲しけりゃ自分で買えよ。言わんけど。


 その日買ったアイスクリームとケーキはまたの機会にして、その日のデザートはこの前のハンバーガー屋のアイスクリームにしておいた。みんなバニラとチョコとストロベリーの3種類を順番に全部食べようと思っていただろうからな。


 その日の夜も金のサイコロを錬成した俺は、ぐっすり眠ることができた。



 翌朝。


 パンとサラダとスープ、それにハムステーキの朝食時。


「みんなの午前中の作業が終わったら、今日はピクニックにいくぞ!」


「ご主人さま、ピクニックってなんですか?」


 この世界にそういった文化がないのか、それとも奴隷の子どもたちに限って知らないのか分からないが、


「みんなで弁当を持って野原や山に出かけていって寛ぐことだ」


 俺の説明では誰もピンとこなかったようだ。


 それを察した華ちゃんが俺に助け舟を出して、補足説明してくれた。


「みんなで歩いていって綺麗な景色を見たりするの。

 お昼になったら、自然の中で地面に座っておいしいお弁当を食べるのよ。

 綺麗な自然の中で食べるお弁当は、お屋敷の中で食べる食事より何倍もおいしく感じるのよ」


 華ちゃんの助け舟も子どもたちにはあまり理解できていないようだった。


「今回は歩かず、車に乗って移動するつもりだ」


「馬車に乗るんですか?」と、エヴァが聞いてきた。


「もっともな質問だ。いちおう乗り物だが馬車ではない。

 さっきのピクニックと同じで説明は難しいが実物を見たらすぐ理解できる。それまで我慢しろ」


「「はい」」


「岩永さん、車も持ってるんですか?」と、こんどは華ちゃんの質問。


「ちょっとな。うまく手に入った。何人乗りなのかは知らないが大きな車だからみんな乗っても余裕だぞ」


「岩永さん、ここっていわゆる異世界ですよね?」


「うん。そうだが」


「もういいです」


昨日きのう日本に跳んだ時、良さそうな車を見つけたんで錬金術を使ってコピーしたんだが、そいつには問題があって、新しく仕入れてきた」


「コピーしたって、そんなものまでコピーできるんですか?」


「まあな。自動車のような大きな金物かなものをコピーするにはある程度コストがかかるんだが、そこはいいだろう。

 そう言えば、この世界のことを『ここ』とか異世界って言うのも変だろ? ここの連中はここのことをあえて言えばアースって言ってるし」


「そう言えば、そうですね」


「ということで、俺はここのことをニューワールドって呼ぶことにしたんだ」


「新世界ですね。いいですね、新世界ニューワールド。わたしも使わせてもらっていいですか?」


「もちろんだ。

 で、話は戻るが、ピクニックでの昼食は代わり映えしないがいつものようにハンバーガーシリーズだ。

 その代り今日は新しいアイスがあるからな」


「「ヤッター! わーい!」」


 そうだ、こういう時こそ、お菓子の出番だ。車の中でお菓子を配ってやろう。


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