第35話 ハンバーガーセット

[まえがき]

誤字報告ありがとうございます。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 エアコンを注文して、昼食用にハンバーガーセットを買った俺は屋敷に帰り昼食の準備を始めようとしていたリサに、


「昼食は俺が買ってきた。リサは昼の準備はいいからゆっくりしてていいぞ」


「ありがとうございます。飲み物だけ用意すればいいですね?」


「飲み物も買ってきたんだが、ちょっと変わった味のものだから、飲み物はあった方がいいかもな」


「承知しました」


「子どもたちは?」


「庭の草むしりと、屋敷の拭き掃除をしています」


「感心、感心。

 昼になったらみんな食堂だ」


「はい」




 リサに話し終えた俺は、今度はスタンド型の照明を各所に置いて、タップにコードのプラグを差していった。そのあと、電子レンジを箱から取り出して、台所の調理台の脇に置き電源コードを近くのタップに差し込んでおいた。アース用のコードが電子レンジのプラグに付いていたが目を瞑った。電子レンジももちろんコピーしている。


 その後、庭の物置にいって発電機を回し、屋敷に戻ってスタンドのスイッチを点けてちゃんと明かりが点くか確認した。当たり前だがちゃんと明かりはついた。どれもLED照明なので消費電力は微々たるものだ。


 そのあと、リサを呼んでまずは湯沸かしの使い方を教えた。これは、ポットに水を入れてスイッチを入れればいいだけなので説明は簡単だった。


 問題は電子レンジだ。ダイヤルを回すと設定時間が増減するわけだが、それに合わせて数字の表示が変わる。もちろんリサにはその数字が読めないので、対応表を紙に書いておいた。電子レンジの設定時間の目安は体感で覚えていってもらうしかない。俺でも使えていたのだから、何とかなるだろう。


「どちらも、外の小屋の発電機が動いていないと使えないからそれだけは覚えていてくれ」


 それだけ注意しておいた。



 正午の鐘が聞こえてきた。掛け時計だか置時計を買っておけばよかった。次買い物に出た時は屋敷用の時計を何個か、いや何種類か買っておこう。コピーは簡単だから同じものの個数はいらないものな。でも、ここの時間が正確に地球の1日24時間と一致していないと困るが、今まで、ここと日本の時間差を感じたことはない。一度確認した方がいいな。

 


 食堂にいくと紅茶が用意されみんな席に着いていた。


 俺はアイテムボックスからハンバーガーセットの入った紙袋を取り出し、中身をテーブルの上に出していった。


 まず全員にセットのダブルバーガーとポテトとコーラを配り、


「この紙袋に入っているのがハンバーガーだ。これにはパテといってひき肉を固めて平たくしたものが2枚入っているからダブルバーガーっていう」


 俺が紙袋を半分開いて中身をみんなに見せてやった。


「食べる時は、包み紙を半分開いてそこからかぶりつく。そうすると外にこぼれにくいからな」


「それで、これがフライドポテト。じゃが芋という芋を油で揚げたものだ。手でつまんで食べればいい。お好みでこの赤いのを付けてもいい。赤いのの名まえはケチャップだ。ケチャップの容器の角がめくれるようになってるからそこをめくってからフライドポテトをつけて食べる。こんな具合だ」


 俺はケチャップの容器を開けてフライドポテトを一本ケチャップに軽くつけて口に運んだ。


 久しぶりのフライドポテトは美味びみだった。


「この紙でできたコップの中に入っているのがコーラっていう飲み物だ。今は蓋がついているから色が分かりにくいが黒に近い褐色だ。

 どう飲んでもいいが、蓋についているその棒に口を当てて吸い込めば飲める。

 こんな具合だ」


 ストローを使ってコーラを飲んで見せてやった。


 久々のシュワシュワですっきりする。


「それじゃあみんな、いただきます」


「「いただきます」」


 みんなはまずダブルバーガーの包みを開いて中身にかぶりついた。


「「おいしい!」」「初めての味」


 好評だったようだ。


「それだけで足らないようなら、パテは1枚しか入っていないが、ハンバーガーはまだあるからな」そう言って、タダのハンバーガーをテーブルの上に出してやった。


 ダブルバーガーを二口食べたところで子どもたちは飲み物に手を出し始めた。


 いきなり口に入った炭酸飲料で全員むせた。


「慣れるまでは変な味に感じるかも知れないが、これが癖になるんだ」


 そう言って俺はストローで一口コーラを吸った。


 子どもたちはむせながらも、


「ケホッ、ケホッ。口の中がシュワシュワする。不思議な味だけどおいしい」


「ホッ、ホッ。のどが辛い? 甘くて辛くはないけど、やっぱり辛い?」


「ゴホッ、ゴホッ。フー」


 最後に4人揃って「「ゲップ!」」


 ここまで飲み食いした俺はふと思い立ち、テーブルの上に置いたハンバーガーをひとつ収納して、コピーしてみた。


 普通にコピーできてしまった。


 コピーとオリジナルを机に戻した俺は、


「このハンバーガーはいくら食べてもいいからな」と、みんなに言っておいた。


 明日日本に帰ったら、スーパーマーケットにいって目ぼしい商品を全部コピーしてやろう。本来、買ってからコピーしたほうがいいんだろうが、商品が一瞬だけ見えなくなるだけでコピーしたらすぐに戻すんだからいいだろう。あまり大っぴらにそんなことをしていると警備員に声をかけられるかもしれないが、手ぶらなら見咎められても何も問題ない。


 そういえば、オフロードカーもコピーしなくちゃな。俺自身はペーパードライバーだから日本じゃ怖くて運転できないが、ここの野原を走る分には俺でも何とかなるだろう。


「フライドポテトを食べながらコーラを飲むのも美味しいぞ」


 そう言ってやったら、みんなフライドポテトに手を出し始めた。


「赤いの、少し酸っぱくてフライドポテトに合うね!」


「赤いのつけなくても、塩味が利いてて美味しいよ」


「赤いのはケチャップって言うんだよ」



 みんなは、コーラでお腹が膨れたようだが、それでも一人一個普通のハンバーガーに手を出していた。


「最後に2つ残っているが遠慮するな。まだまだいくらでもあるんだからな?」


 目の前にコピーしたバーガーを出してやってもいいが出してしまうと冷めてしまうので、このままにしたのだが、みんなもう十分と言ったので、俺が無理して残った二つを食べてやった。


 食事の後は恒例の円盤大会を開いたのは言うまでもない。その日の出し物は『アニメ日本昔話 竹の子取り物語』にしてやった。

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