第27話 さらにお買い物


 玉子かけご飯を食べて元気モリモリの俺は、今日のおろし用のヒールポーションを作ったあとは、日本に帰ってホームセンターを覗いてみることにした。


 転移する前に、リサに対して『俺の渡す玉子以外、生で食べないように』と、言ったところ、


「もちろんです」と、返された。玉子を生で食べないことは日本以外の国では常識だろうからな。


 市場調査をしていないので、この世界での生卵の値段を知らないが、決して安いものではないだろう。そういった卵を生で食べないということを知っているってことは、リサはやはりいいとこのお嬢さんだった説が有力になる。



 ホームセンターで買うものは炭素原料としての木炭と、昨日買い忘れたお椀と醤油差しだ。それ以外にも何か便利用品があれば適当に見繕って買おうと思っている。木炭について言えばニューワールドでも手に入るのだろうが、いちおう勝手知ったるホームセンターで買おうと思ったわけだ。


 それと、ホームセンターにいく途中にスーパーでもあればインスタント味噌汁も買うつもりだ。インスタントと言っても生の味噌が入っているものがあるが、初めて味噌を見ることになるうちの連中にはハードルが高そうなので、味噌が顆粒状になったものを選ぶつもりだ。


 インスタントといえばラーメンだが、どうせリサが料理を作るので、インスタントに頼る必要はない。そのうち食べたくなって買うかもしれないが、今のところはいいだろう。その時にはタイマーが必要だが、そもそも数字表記が地球とニューワールドでは違うのでデジタルタイマーはちょっと使い勝手が悪い。3分砂時計があれば便利かもしれない。


 午後からの予定は、神殿の壁を原料にしていたポーション瓶用の石材がだいぶ減ってきたので、向こうに戻って郊外に出かけ、石材や土砂を補給しようと思う。川とかがあれば大量に水を仕込められるのでありがたいのだが、はたしてどんなものか。とはいえ、午前中の買い物で疲れたら、明日に延期するがな。



 ホームセンターまでの道は当然知っていたが辺りの様子はよく覚えていなかったので、転移できなかった。それで、ホームセンターになるべく近いところに転移して、1キロほど歩いてホームセンターに到着した。次回転移で直接来るため、ホームセンターの少し脇当り、人気のあまりない場所をじっくり観察しておいた。


 そのあと正面玄関から入った俺は、入り口に置いてあったカートを押してじっくり商品を見ながら店内を巡っていった。


「おっ! これなんか役に立つんじゃないか?」


「これも、役立ちそうだ。

 これも。……」


 まだ目当ての木炭を買っていないのだがカートが一杯になってきた。


 レジを一度済ませて、人目のないところでアイテムボックスに品物を収納した。意外と値が張る物まで買ったようで、財布の中身がかなり少なくなった。後で現金をキャッシュカードで下ろしておこう。


 ホームセンターで目的のものを買わないうちから結構な買い物をした俺は、荷物を収納したあと、銀行のそばに転移した。銀行では20万ほど引き出して財布に突っ込んだら財布が厚くなりすぎたので、アイテムボックスに移し替えた。



 転移で直接ホームセンターに戻った俺は、同じようにカートに目ぼしいものを入れて、目的の木炭も買い込み精算してホームセンターを後にした。お椀と醤油差しも忘れずに購入している。それにしゃもじが目についたので買っておいた。



 買い物は終わったのだが、これからニューワールドに帰っても昼までには時間がある。屋敷に帰ってお茶でも飲んでいれば昼になるだろうと思い、屋敷の居間に転移した。



 俺が帰ってきていることに気づいたリサが、何も言わなくてもお茶を持ってきてくれた。リッチな生活だ。子どもたちはポーションを卸した後、リサの指示で屋敷の掃除と屋敷周辺の草むしりをしているらしい。


 お茶を飲み終えてしばらくしたら、昼食の準備が整ったようで、庭に出ていた子どもたちも戻って、手を洗い、みんなで食事が始まった。


「「いただきます!」」


 昼食を食べながら、リサに、


「石とかが転がってるようなところを近くに知らないかな?」と、聞いてみた。


「私も詳しくはありませんが、南門を出てしばらく行けば野原というか原野が広がっていると思いますから、その辺りまで行けば石もそれなりに転がっていると思います」


「ありがとう。

 食事が終わったらいってくる」


「ご主人さま、そういえば、街の南はどこからかは知りませんが神殿の所有する土地だそうで、神殿関係者以外が入ることは禁じられているという話を聞いたことがあります」


「ふーん。神殿の持ち物か。俺にはどうでもいい話だけど、教えてくれてありがとう」



 昼食が終わって、しばらく休憩した俺は、俺の知っている場所で、街の南門に一番近いと思われる場所に転移して、それから南門を目指した。


 南門では門衛が立っているわけでもなく、フリーパスで街に出入りできるようだった。その代わり門の上に見張りの兵士が立っていて、街の外を警戒しているようだった。


 どこかの誰かが攻めてくるのを警戒しているのか知らないが、ご苦労なことである。


 俺は街の門を出て街道らしき通りを南に向かって、ある程度大きな石が落ちていないかキョロキョロしながら歩いていった。


 残念ながら街道の周辺は整備されているようで目立った石は見当たらなかった。陶器のポーション瓶の原料という意味ではそこらの土砂でも十分なのだろうが、せっかく綺麗に整備された街道周辺を勝手に掘り返して穴をあけてもマズそうなので、街道を外れて、神殿が所有する土地だという荒れ地というか原野に向かって歩いていった。小川とか泉でもあれば水を大量に補給しておくのも手だ。



[あとがき]

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