旅立つもの
バブみ道日丿宮組
お題:同性愛の木 制限時間:15分
旅立つもの
愛が永遠であるならば、それはきっと素晴らしいものだろう。色あせないものとして色んな場所に咲き続けこの世を支配もできた。
そんな素晴らしく美しいものは、今の私にはない。
彼女が死んだ世界を生きる意味はあるのか。一緒になれないのなら、はじめから愛なんてうまなければよかったのか。あるいは私という個体が生まれるべきではなかったのか。
そう問いたい相手は今はいない。
「……」
手紙だけを残して、一人先に旅立った恋人の遺骨が眠る木。
その木の側に寄れば、私も後を追うべきであったのだと過去の自分を恨みたくなる。こうして振り返ることもなかったことだろうし、親の道具として利用されることもなかった。
そう……今の私は、
「お嬢様、そろそろお時間です」
監視のさらに監視がつく、自由のない世界。あの時彼女と歩いた世界はもう赤く塗りつぶされてしまった。
「……そうですか」
私は彼女が好きだった花を木に捧げる。恋人であった彼女の世界にこの花が届くかはわからないけれど、私がいけないのであれば他のものを捧げるほかはない。私の愛がほんとうにあったのだとしたら、この行為をやめることはできない。
「いきましょう」
こうして彼女が死んだ場所に足を運ぶことはまだ許されてる。これもまだ許されてるだけで、婚約者が決まれば変わってしまう。
跡継ぎのために作りたくもない子供を作らなければいけなくなる。生まれてしまえば、私はお役御免となって余生を過ごせるようになる。
そんな安っぽい決まりごとを親に決められた。
子供ができれば、そう簡単に余生を過ごせるわけがない。愛しくない相手とのできた子であっても、私の血を引いた存在であることに変わりない。
これが彼女との子供であれば、私は何も文句は言わなかった。
でも、その可能性すらもう訪れない。
彼女は、違う世界で一緒になろうと、一人いってしまったのだから。
旅立つもの バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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