チョコ
バブみ道日丿宮組
お題:今の少数派 制限時間:15分
チョコ
多数票があるからといって正しいわけじゃない。けれど、少数が間違ってるわけでもない。
結局のところ比較対象があるからこそ比べてしまうわけで、もとがなければ比べようがない。
「ま、そんなことを言っても昔には戻れない」
「それで食べる決心はついた?」
ベンチの隣で不満げな顔をしてる彼女。僕が持ってるチョコレートを食べろと催促してくる。これが他の女の子だったらすぐに食べるのだろうけど、これは彼女が作ったもの。食べ物と呼べるか怪しい実験食品。
「もう何年もやってるんだから食べてよ」
「それをいうなら何年も作ってるんだからそろそろ料理覚えない?」
むーと彼女はうなり始めた。
「だってさ、お母さんがバレンタイン以外で台所に入れるの嫌だっていうんだもの。家庭科の授業ぐらいしか練習できないんだよ?」
「それはお母さんが正しい気もするな」
僕だったら間違いなく一生入出禁止にするだろう。
「ひどいな。わたしだって頑張ってるんだよ?」
「わかってる」
幼稚園のときに黒焦げを食べさせられた頃と比べれば、今は形だけはチョコレート。ラッピングはまさにバレンタインデーを彩るものだった。
こういうところだけは女の子らしさがあるんだけど、なんで料理だけはだめなのだろうか。
「結婚したら私台所入っていいかな?」
「うーん、今のままなら無理かなぁ。僕も死にたくない」
彼女がジタバタと暴れ始めたので観念して、ひとつまみチョコレートを手に取る。
「たぶんおいしいはず」
「はず……ね」
試食はしてるとのことなので、食べれないということはないだろう。味覚の違いということを考えなければ……。
「ん……ん……」
口に入れ、味を確認。
「どうか……な?」
「うーん、味がないかな……?」
しいていえば、髪の毛のような感触……とはいえない。さすがに僕も好んで傷つけるという選択肢はとらない。
「そう……?」
「そう。ほら、僕が作った方食べてよ」
うんと頷いた彼女は、僕が手渡したバレンタインデーの包みをあけてチョコレートを口に運んだ。
「美味しい。やっぱりかなわないな」
「そこは勝ってほしいんだけど……」
親の雑用で料理してるような人間が作ったチョコレートに価値を見いだせない。
「じゃぁ今度さ料理教えてよ」
「そうだね。もうそういう時期に入るかもね」
大学からは同棲することが決まってる。ならば、最低限のことはできるようにしてもらわないと僕たち……僕が生き残れなくなるだろうからね。
チョコ バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます