色
バブみ道日丿宮組
お題:青い銀行 制限時間:15分
色
色というものがこの世界にはある。
一般的にそれは視覚情報として脳内へと信号を送ってくる。例えば、赤は危険であったり、緑が温もりを感じたり。
そんな色の違いでお店の繁盛具合が変わる。
ジャンクフードのチェーン店がまさにそれ。目立つ色にして人の注目を釘付けにする。そうすることで少しでも売り上げをあげようとするある種姑息な手だ。
そういう意味じゃ青という食欲をなくす色彩で看板を出してるお店は勇気がある。店内まで青一色というのは不思議な気分になった。貴重な機会を得たといえるだろう。
「……面白い?」
「面黒い」
彼女に付き添って巡ってるのはそんな色彩が違うお店巡り。もちろん、注文などしないので嫌な視線を向けられる。
彼女には国から色彩指定職という特殊な資格を与えられており、文句を言おうものならば営業を停止させられるぐらいの権力を持ってる。
その資格証明書は見せるだけで、店内のチェックが無料でできるのだから便利なものだ。
「次は銀行。青いところがあったの」
そういって彼女は僕の手を引っ張る。
先程からリードされまくりだ。少し彼氏として頼りない感じがするが、実際彼女の能力に比べて僕は平凡でしかないのでどうしようもない。
そんな僕でもいいといってくれる彼女だからこそ僕も彼女の仕事についていって感想をいう。それぐらいしかできないけど、彼女は満足そうに頷いてくれる。
今はこれでいい。
いつかなにか彼女に驚くようなことをしてあげたいが……今は思いつかない。
「銀行っていっても中は同じじゃない? 警備の人が嫌そうにするだけなような……」
気がする。
銀行には何度も足を運んだことがあった。
その時は警備の人がかなり困惑してた。セキュリティの問題だからとか、監視してる以上厳しいですと断るような断ってない言葉をひたすら述べてた。
「大丈夫。名前だけはしられてるし、君もいる」
ぎゅっと強く手が握られた。
頼りにされてると信じたい。
「僕で役に立てるなら協力するよ」
「ありがとう」
そういって彼女は手どころか腕にしがみついてあるき始めた。
「あなたと見る景色は凄くキレイ。だから、放さないでね?」
僕は静かにその言葉に頷いた。
色 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます