彼とわたし
バブみ道日丿宮組
お題:わたしの好きな動揺
彼とわたし
動悸が強くなればなるほど、わたしは彼のことが好きなんだって気付かされる。
優秀な彼はことあることに体育館で表彰される。その姿をみるだけでわたしは赤面した。自分のことじゃないのにまるで自分自身が見られてるような錯覚に陥った。
そのおかで、教師に体調大丈夫かと体育館の端で症状が収まるまで見てもらったことが多々ある。そんなダメダメなわたしにも得意な分野があった。
それは絵を描くこと。ただ普通の人間には普通にしか見えない。ぶっちゃけわたしもなにを描いてるのかわかってない。
ただ絵の具と絵の具が交わって汚いものになってるキャンパスーーこれが一番正しい表現の仕方だろう。その色つけの仕方が美術を愛するものにはとてつもないエネルギーを備え持つ技術らしいのだ。
「……うぅ」
彼だけでなくわたしも一緒に表彰されるとあのときは思ってもいなかった。
評価されなければ、こうして体育館の端にこのために用意されたパイプ椅子に座ることもなかった。しかも彼の隣にーー近づけるとは思いもしなかった。
「大丈夫? 大丈夫……そうではないね。先生呼ぶ?」
「大丈夫です。は、はじめてだったので」
そうと彼は気になる素振りを見せつつも未だに挨拶を続ける校長へと視線を向き直った。大丈夫じゃないっていったら、彼は解放してくれたのかなという邪な考えはすぐに消えた。
普段から端に連れてかれるのだから、今回は保健室移動とかになるに違いない。
そうなるぐらいなら、少しでも彼の温もりを感じたい。温もりというか空気なのだけど……。同じ空気を吸えることはこれから訪れるかはわからない。
私は神さまじゃない。
ーー人間。
人間だからこそ、暴れる動悸を少しでも落ち着かせなければならない。校長の前で失神でもすればうわさになってしまう。
彼に近づくために作品を仕上げたのだ、と。
そんなふうに思う人はいないと信じたいが万が一を考えるとどうしようもなくなる。
「……ふぅ」
この動悸は嫌いじゃない。
彼のために高まってる、私の感情。なら、好きにさせたい。
人を愛するというのは、常にドキドキするものだから。
彼とわたし バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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