首輪のあるタマ

トンケント

第1話

 カールは膝をついて顔は王に向けている。

「必ず魔王にとどめを刺してみせます」

 そう力強く言うと、王は満足した。

「ふむ。では、門の前にいるタマを連れて行け。あいつは強いからな。その強さを操るために〝主導権の首輪〟をしてあるが・・・権利をお前に譲るとするか」

「ありがとうございます!」

 カールは頭を下げた。

 王はその姿に満足して、どこからか剣を出す。

「この〝よく斬れる剣〟を持ち行くがよい、若き勇者よ」

 カールは王から直々に剣を受け取り、背中にかける。

 勇者となったカールは静かに城を出た。


 日がさす昼。

 厳つい門の前に、人の形をした猫がいた。タマである。

「うーん、眠いにゃ〜」

 タマは両腕を伸ばして大きな欠伸をする。体勢を横にして「もう寝よう」と考えていると、頭の上にある耳が〝ピクり〟と動いた。

 ゴゴゴゴゴ

 門が大きな音を立て開いていく。そこから出てきたのは青年で、ラフな格好で荷物は剣一つ。

 青年はタマを見つめている。

「何かようかな?」

 タマは尋ねると青年は笑顔を見せた。

「ぼくはカール。人類の希望の星で、これから魔王を倒しに行く強き勇者です」

「そうなんだ。頑張ってね〜」

 タマは二度目の欠伸をすると、体を丸くした。

「あなたはタマですね?共に魔王を倒しましょう!」

「んー、おやすみ」


「タマに拒否権はありません。タマタマ〝立て〟」


「ニャ!?まさか!!」

 カールが呪文を唱えると、タマの首輪が怪しく光った。そして、命令に逆らうこともできずにタマは立つ。

 タマは「あの王め」と小さく呟いたあと、カールを優しく睨む。

「・・・カールには勇者としての人格はないようだね。命令しないと仲間を従えることさえで・・・」

 タマが言い終える前に、

「タマタマ〝口を閉じろ〟」

 カールは呪文を唱えた。

「んーんー〜」

「なんて便利なんだ!」  

 笑顔なカールに、タマは色々と諦めた。


 カールとタマはしばらく歩く。辺りは岩だらけで草ひとつない。そこは盗賊が出るとされ、警戒する必要があった。

「ふー、疲れましたね」

 カールは手ごろな岩に座り込む。

「ここは盗賊が出ること有名だよ。先を急ごう」

 タマはカールの袖を引っ張るが、びくとも動かない。

「ぼくは勇者ですよ。どんなことでも任せてください」

 そう言い終えると、さっそく盗賊が姿をあらわした。人数は五人である。

 カールは盗賊の手に注目する。五人はみな手頃な武器を持っていた。

「・・・ぼくは勇者ですよ?タマがどうにかしてください」

「その剣は飾りかにゃ?」

 タマは呆れながらもポケットに手を入れ、本をだす。一回擦ると本は大きくなった。

 カールも盗賊もその不思議な光景を黙って見ている。

 タマは適当にページを開き、呪文を唱えた。 

「ニャルニャルホイ」

 タマを中心に白い光がなる。

 しばらくすると光は弱まり、辺りにはタマしか残っていなかった。カールと盗賊を一つの魔法で消してしまったのだ。

 タマは強者の笑みを浮かべた。

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首輪のあるタマ トンケント @tonkento

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