龍国の襲来(13)
「【
そう唱えるとルクスは、いくつかの小さな火玉を同時に召喚した。すると、唇すら動かさずに、小さな火玉を1つ、接近している光の弾に放った。
2つの破壊魔法が空中でぶつかり合い、しばしの争いを繰り広げた。
放たれた【
【
それぞれの小さな火玉には、もはやとんでもないぐらいのレベルの魔力が注ぎ込まれているため、たとえ大きなビルでも残らず破壊するポテンシャルがあるが、とても強いすべての魔法みたいにデメリットがいくつかある。 やはりそもそもこの魔法を使用するには、相当のMPが必要だ。
小さいのにビルすら残らず破壊できる魔法なので、自由自在に操れる20個の火玉には、前も言ったように不自然なほどに極限まで魔力が圧縮されている。
そのために結構不安定だ。つまり、もし一瞬でも気が散ったら、爆発する。それ以上でもそれ以下でもない。
そしてその範囲にあるすべてのもの……あるいはその範囲にいるすべての人が猛烈な焔によって
そのうえで、それぞれの小さな火玉には等量の魔力が注ぎ込まれているので、MP的にも結構厳しい。 …………とにかく、デメリットが多すぎる。そう、思うでしょ?
デメリットがこんなにたくさんあるので、そもそも生死の戦いで使うのはかなりヤバいじゃないか? と。 ――確かに。
そうかもしれない。 けれどルクスには、【
グランが投げつけた
その小さな光の弾に潜在する破壊力が凄まじいものだから。そんなことを知っているだけで十分に戦いの序盤から本気を出す理由にはなるだろう。
つまり、もし死にたくなければ、使わなければならなかった、というわけだ。 ――そしてその結果として……
もうけっこう魔力を使い切っていたルクスだが、【
魔力は、ほんのちょっとだけしか残っていないだろう。
しかし決して、空中でせめぎ合っている【
――2つの攻撃魔法から目をそらすことはなかった。 後ろで浮遊している小さな火玉はあと19個しか残っていない。
光の弾を打ち破って、その残りの19個の火玉でグランを囲み、脱出不可能の状況を作るつもりだ。ただ、維持しているうちに魔力がどんどん減少していく。
が、そんなことはどうでもいい。何故ならルクスは、空中でせめぎ合っている2つの攻撃魔法にあまりにも気が取られていたため、見逃してしまったから。
「隙あり」
…………思えば、もっといい作戦を考えるべきだった。いや、そもそも油断するべきではなかったか。 唐突に、目の前で現れたグランを見て、彼はそう思った。
◇
そしてシリカは、
「………………!」
無言のまま、目の前で繰り広げられている伯父と父上の戦いを陰から見ていた。
タイミングを見計らっていいところで援護することにしたが、いつの間にか父上は伯父に貫かれた。
そもそも伯父が動いたのに、父上がその腕からぶら下がっているのが見えるまで、全然気づかなかった。
そして父上――雛だった頃から全力を尽くして自分を育ててくれた存在がもうこの世にはいないと実感したら、悲しみじゃなく、何故かとんでもない怒りに襲われていた。
意味がわからない。
どうしてこうなったんだろう。
そう、シリカは涙をこらえながら、思った。
身体が熱い。
息も荒い。
憤りに満ち溢れている目は空中で龍の翼を召喚して浮遊している伯父を敵視しているのだ。
もう。
身体がとても熱いんだ。
…………この時点では、頭はもはや殺害の思考でいっぱいだった。
そして彼女が無意識に発射している力にもちろん、グランは気づいた。
「おや? もしかしてシリカちゃんじゃないか?あそこにいるだろう?ほら、さっさと出てこいよ」
そう、さりげなく言うと、腕からぶら下がっているルクスの
それを見てシリカは一瞬怒りを忘れて、大きく目を見開いた。
確かに父上はもう死んでいる。
だが、それはないでしょう。
とんでもない速さで、彼女は落とされた父上の死体に駆け寄って床にぶつかる前になんとか受け止めることができた。
けれど自分が気づいていないというのに、面白げに見ているグランは気づいたのだ。
そして一瞬、不安感に彼は襲われた。
何、今の速さ?
と、グランは思う。
確かにシリカが戦っているところを見たことがない。
もしかして、弟より強いじゃないか?
……いや。そうでもないか。
もしそうだったらあのとき逃げなかったもんな。
というと、じゃ何が違うか。
深く考えずに今の速さは普通じゃなくて異常なものだと誰でも思うでしょう。
ふと、弟に命令され、一瞬戦いから逃げ出したあのときのシリカを思い出す。
――遅かった。
あんまりにも遅すぎたのだ。
が、今のシリカとあのときのシリカと比べると、明らかに今のシリカはひと味違う。
雰囲気的にも、能力的にも。
しっぽりと、床に父上の死体を置くシリカ。
するとしばらく父上の死体を見ていると、急に震え出す。
しかしそれは恐怖で……じゃなくて、さっきから身を焼いている怒りで、だ。
すると彼女は怒りの対象であるグランへと振り向くと、睨みつける。
そしてその瞬間で、グランはようやく気づいたんだ。
「【
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