龍国の襲来(10)
飛んでくる光の弾。
確かに追跡攻撃魔法じゃない限り、うまく回避できると思うけど、 が―― しかしもし、回避していたら、代わりに自分たちがいるこの書斎が木端微塵に破壊されちゃう。
そして混乱に陥っている龍国は、混乱を超えて混沌に進化する。 そんなことを考えると、ルクスはため息をつくことしかできなかったのだ。 ――仕方ない。 受け止めよう。
…………とは言うものの、それは口で言うほどそう簡単じゃない。 その色とりどりの光はあくまでもドラゴンスレイヤーの使用する魔法のひとつだから。
つまり、龍を殺すために作られ、龍を殺すために使用された。
もし当たれば言うまでもない。 即死以外は何ものでもないのだ。 たぶん、龍化していたら死は避けられるかもしれないけど、けれどかなりのダメージを受けるに違いない。
…………どうしようかな。 と、内心で慌てているルクスはふと、思う。 もし万が一受け止めることに成功していても、自分の死はまだ確定だ。 だったら意味はないんじゃないか? 確かに意味はないかもしれない。
が、少なくともさらなるパニックにはならない。 言い直せば、さらなる混乱を避けることはできるという。 考えれば、やっぱり答えはひとつしかない。
「跳ね返そうか」
そう。答えは自分の魔法攻撃で跳ね返すことだ。 しかし魔力がそれほど圧縮されているドラゴンスレイヤーの魔法である、その光の弾が。 小さいけど、とても容易く跳ね返せそうには見えない もうひとつの解決策をしいていうなら、打ち消し系のスキルや魔法を使うことだけど、 だが、残念ながらルクスはそういう類のスキルや魔法は覚えていない。
多分、自分が考えている解決策よりもいいのがあるとは思うけど、こちらへと飛んでくる光の弾を見つめてばかりいるのは馬鹿らしい行動にすぎない。
戦いにおいては、言葉より行動が大事だ。
――そう。 行動が大事だ。 躊躇する暇はない。 怯む暇もない。 龍王として、国民を最優先にするのは当然だ。 一目瞭然だ。 よってここで、考えすぎるのはよくない。 ただ行動するのみが、大事だ。
そう、意を決したルクスは、躊躇うことなく行動することにした。 深呼吸をして、魔力を最大限まで引き出す。 そしてほぼ同時に、ひどい疲労感に襲われる。
にもかかわらず、魔力をさらに集めて、そして体外へと引き出すことはやめなかった。 自分の国を守るために、自分が死んでいても、全力を尽くすことにしたのだから。
そしてそんな勇敢なルクスの姿を見てグランは……
「ひひひひ――――」 と、気持ち悪そうに笑うことしかなかった。 あきらかに自分が知っているグランじゃなくなったんだ。 ――っていうかあの人間はいったいどこなんだ。
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